赤ちゃんを抱く手
ボディートーク・マタニティのメインプログラムのひとつに『赤ちゃんを抱く手』があります。この手になるには、次の5つの要素を練習していきます。それは、
1 あたたかい手
2 やわらかな手
3 繊細な手
4 包む手
5 溶ける手
そし て、この5つの要素が総合的に関わり合いながら高まっていくと、羊水感覚の環境をたっぷりと赤ちゃんに提供できるようになるのです。
そしてこの『赤ちゃんを抱く手』は、赤ちゃんのためだけのものでなく、繊細なレベルで自分で自分の心と体をほぐす《一人体ほぐし》や《二人体ほぐし》にも大いに役立つものです。
残念ながら『この手』のレッスンは、紙上ではご説明できませんが、機会があり ましたら、是非一度、ボディートークマタニティ指導者から直接受けてみられることをお勧めします。
今日は、問答法でそのご紹介をしましょう。
初めてお会いする赤ちゃん連れのお母さんと「ボディートーク・マタニティ子育 て教室」で毎回のように交わす会話です。(S…城石、M…お母さん)
S. 「アレッ?赤ちゃんの足、硬いですね」
M. 「エッ?そうですか?こんなものだと思っていましたが…」
S. 「赤ちゃんの体って、もっともっと、つきたてのお餅のようにやわらかいん
ですよ」
―しばらく私が赤ちゃんをほぐした後で、もう一度、お母さんに赤ちゃんに触ってもらう。
M. 「あーほんと、やわらかくなりましたね」
S. 「赤ちゃんには、こんな風に触れてあげて下さいね」
―私がお母さんの体に『赤ちゃんを抱く手』でタッチしてあげる。
M. 「エッ!こんなにやわらかくですか? まるで空気で触れているようですね」
S. 「今までのお母さんのタッチは、たぶん赤ちゃんにとってこのような感じに
伝わっていたと思いますよ」
―おかあさんの従来のタッチの仕方を真似て、私がお母さんの体に触れてみる。
M. 「わぁ~、ずいぶん強すぎる感じですよね」
S. 「そうですよ。ご自分の舌に触ってみて下さい。 やわらかで、あったかいで
しょ?」
―お母さん、自分の舌に触ってみる。
M. 「そうですね。やわらかくて、あったかいですね」
S.「そう。その舌でソッと触れるような感じくらいで、充分なんですよ。では、
赤ちゃんがどう反応するか、この 2 つの方法を比べてみましょうか?まず、 最初は今までやってきた方法でタッチしてみてくださいね」 お母さん、赤ちゃんへタッチ。
S. 「じゃあ今度は、今練習された、舌でなめるようなイメージを大切にしなが
ら、ソフトであたたかいタッチをやってみて下さい」 お母さん、赤ちゃんへ舌なめの要領でやさしくタッチ。赤ちゃんの顔が、や わらかく、嬉しい表情へと変化していく。
M「ワー、本当に表情が変わっていくんですね。ア〜、私は今までずいぶん荒々しいタッチをしていたんですね…」
こうして、一度ですっかり素敵なママの手になる人もいますが、一度で無理な方も、 二、三度通われて練習されると見違えるようないい手になっていかれます、その手で赤ちゃんの体に触れ、ほぐしていってあげると、赤ちゃんはご機嫌で大喜びです。
動物のパンダの子育ては感動的ですが、100gの超未熟児で生まれた赤ちゃんが 無事育っていく秘密は……出産後3日間、ほとんど食事もとらずにせっせとあたたかく、やさしいお母さんの舌が、赤ちゃんをなめ続けていくからなのだそうです。
なめるという動作によって、赤ちゃんの皮膚の新陳代謝が促進され、なめられ
る刺激で排泄がスムーズになっていくこと。また腸が動くことで、内臓への刺激も加わり、消化吸収もうまくいくようになること。
なめる、なめられるという肉体的な相互関係の中で、心理的な母子の絆が強く結ばれていくこと。パンダ赤ちゃんが啼くとなめ、なめられると落ち着く、という繰り返しの中で、赤ちゃんの中に母親に対する《原信頼》が育っていく。 のだそうです。
人間にとっては、動物の舌と同じ役割が、『赤ちゃんを抱く手』と『赤ちゃんに 語りかける声』なのですよね。人間の赤ちゃんもパンダの赤ちゃんも一緒です。
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