3 才児を持つ母親から相談を受けました、「先生、N子が『膝が痛い痛い、立て ない』って言うのですが、病院で検査をしても、どこにも異常は無いそうで …」「いつ頃からですか?」「ここ1ヶ月ぐらいのことです」「一日中そう言いますか?」「いいえ、特に夕方になるとそう言うのです」
N子ちゃんは、 一人っ子の女の子です。お母さんは働いているので、N子ちゃんは保育園へ行っています。 *1才の頃から、夕方のバレエ教室に親子で通っています。最初の頃は、お母さん にピッタリとくっついて離れず、ちょっとでも離れるとすぐに泣き出してしまっていました。でもこの頃はとても元気になって、同じ年頃の子達と走りまわっていま す。保育園でも活発に動くようになってきたとお母さんが話してくれました。
「何か、お家で変わったことはないですか?」「ここ一ヶ月、私の仕事が忙しく、 おまけに私の体が不調続きでしたから…。それに引越しも重なって…」そこまで聞 いて、N子ちゃんの背中を「ちょっと背中トントンしてもいいかな?」と尋ねなが ら触れさせてもらいました。いつもボディートークをレッスンの前にやっているの で、すぐに「アー」と声は出ます。
何だか悲しい声です。特に胸椎3番、8番に固 くしこりがあります。「アレ?ちょっと怒っているかな?(胸椎8番から判断)それにちょっと悲しかったんだよね。(胸椎3番から判断)お母さんに抱っこして欲しかったって体が言っているみたいだよ」と言いながら、体をふんわりほぐしてい くと、「そうなんだ」というように、頭をコックリうなずきます。
N子ちゃんは、保育園で今まで以上に一生懸命元気に活動しています。それで精 一杯頑張った分、お母さんに抱っこしてもらってエネルギーを補充しなければなりません。でも夕方、職場から大急ぎで帰ってきたお母さんは、抱っこする暇もなく、 すぐに夕食の準備、夕食、入浴…と、慌しいばかり。N子ちゃんが「抱っこし て!」と甘えるスキ間もありません。そして、アッという間に時間はすぎて、気付くと、もうおフトンの中という生活が続いていたに違いありません。「抱っこし て!」と上手く言えないN子ちゃんの体は、無意識の働きで、どうにかしてその事をお母さんに伝えたくて、『痛い』という症状に変えて、お母さんにその思いを届 けようとしているのです。
そのことをお母さんに説明しながら、N子ちゃんの体や膝にあたたかく触れて、 「今日はいっはい保育園で頑張ったねぇ、えらかったねぇ。ごほうびにいっぱい抱っこしようね」と言いながら、心ほぐし・体ほぐしの時間をとってみて下さい、と いうアドバイスをさせていただきました。(おんぶするのも一つの良い方法です。 お母さんの背中のあたたかさを感じながら、お母さんの耳元でお話できるからです)
すると、その夜から見事にN子ちゃんの膝がピッタリと痛まなくなりました。 * 大人の方のプライベート・レッスンでも、突然耳が聴こえなくなるとか、突然歩 けなくなるという例はいくらでもあります。後になれば笑い話のようなことですが、 心と体はつながっているな、と改めて実感させられることが度々です。
指導者のテストを受けようと決心したある保健師さんが、ボディートークの試験 の前日、突然原因不明で歩けなくなり、這うようにして、次の日試験会場に来られました。でも試験が終わると「アレッ?不思議」どこもどうもなく、スッスッと歩けるのですから…、「試験はこんなにも私にとってストレスだったんですね」と本人も大笑い。
大人でもこうですから、ましてや幼い乳幼児たちは、充分に自分の言葉で自分の思いを伝えられない分、体にアチコチ反応を起こしながら、我が身を守り、我が思いを相手に伝えようとしていることが多いのです。でも、ボディートー クで体に触れることによって、そのことをキャッチしてもらえると、心と体のカギ がスーツと解けてすぐに元気になっていく回復力の凄さも、子ども達はいっぱい持 っているんですね。
小さなお子さんと接する時、言葉だけにとらわれずに、ちょっと意識を子どもの 声の在り方や息遣いに向けてみましょう。きっと、いろんな心の声が聞こえてくると思いますよ。
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