ボディートークコラム

「チキンちゃん」と呼ばれる赤ちゃん

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両手を後方に引いて、前に出さない赤ちゃんを「チキンちゃん」と呼んで います。このような赤ちゃんの話をチラホラと耳にするようになりました。ウデとムネの間を「ウムネ」と野口体操の野口三千三先生は言っていますが、 「チキンちゃん」と呼ばれる赤ちゃんはウムネが固いので、手が前に出ないの です。

このような赤ちゃんはうつ伏せを極端に嫌います。手で前を支えられな いので苦しいのです。手が出ないので 10 ヶ月になっても寝返りやハイハイは もちろん出来ません。どうしてこんなことになったのでしょうか?

原因の一つに正しくない前抱っこがあります。そういえば最近、前抱っこが目に付いて、昔のように背中におんぶしているお母さんを見なくなりましたね。
前抱っこによく利用されるものとして、背板の硬い抱っこ紐やスリングがあります。

スリングはアメリカから入ってきた、赤ちゃんの前抱き用の袋です。スリングは、別名カンガルーの袋と言われています。赤ちゃんが子宮の中にいるような感じで大事にしよう、という考えです。 赤ちゃんの脊髄をCの字型に保ち、保育できるので、首が据わるまで大切な姿勢が保てるものです。しかし意外と正しい使い方が伝わっていないようです。

必要なことはスリングと並行 して、赤ちゃんをうつ伏せにして遊ばせ、首を持ち上げたり、両手や両足で体重を支えたりする動きをさせることなのです。
首が据わっていない0~4ヶ月くらいまでは、特に赤ちゃんをヤモリのよう に体を母親に沿わせる必要があります。また、首がダラーンとスリングの外に出ることが無いように布の中で保護する必要があります。

すなわち、股関節の動きを制限しないように赤ちゃんの体をリラックスさせることと、背骨をCの字型に保てるように、両手ないしは片手を添えることが大事です。ところがスリン グを使うことで、一時的にせよお母さんの両手が 空く、と考えることが問題の始まりです。

と言いますのは、首が据わり、赤ちゃんが大きくなると、 お母さんは片手に携帯電話、もう一方に荷物をぶ ら下げてスリングをずらして、お腹の前で赤ちゃ んを支えたりする人もいます。こうなると、赤ちゃんはいつもお母さんのお腹に押し付けられている ので、手が前に出せなくなり、ウムネが固くなっ てしまいます。

そんな赤ちゃんをほぐした時のことです。お母 さんに抱っこしてもらったまま、ほぐしました。 この赤ちゃんを仮にF子ちゃんとしましょう。F子ちゃんの腕を前に出させようとしましたが、出す事を嫌がります。ウムネが固まっているからです。そこでそっと触れた手で、背中から腕へ、腕から手へと流します。F子ちゃんの腕が内から動こうとする方向を援助する流し方です。そうすると、知らず知らず のうちに手が前に出るようになります。

次に、お母さんが膝の前でF子ちゃんと向かい合うように床に足をつかせ、 体を支えます。F子ちゃんはお母さんの膝の上に倒れてきて、モゾモゾと動きます。私はF子ちゃんの腰に手を添えて、モゾモゾ動きがしやすいように手助けをします。あくまでも本人がやっている気分にさせることが大切です。

F子 ちゃんは「アーアー」と声を出しながら動きますが、私も同じ声を出すようにして、一緒に体に手を添えたまま遊びます。同じ声を出してもらうと、F子ち ゃんはさらに、体の内部を動かすようになるのです。

やがてお母さんの膝から降りて、寝返りを打つようになりました。「すご~ い!ひとりで出来たね。すごいね!」と声をかけながら、両手でパチパチと手を叩き、バンザイをするように手を添えました。それを何回か繰り返すうちに、 F子ちゃんは、一人で拍手をし始めるようになりました。

赤ちゃんは体に不自由を感じると、様々に蠢きながら楽な姿勢を得ようとします。赤ちゃんをほぐす時は、このような動きを保障しなければなりません。 そのためには動きを促すことも必要ですが、動き出すまで待つことも大事です。 又お母さんもどなたかの手を借りてほぐしてもらえるようになると、子育 ての不安もずいぶんと軽くなりますね。

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