ボディートークコラム

夜の星を見上げてごらん

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空を見上げると 

♪ 星空を見上げると

      何故かしらおだやかな 

         不思議な気持ちが満ちあふれる〜 ♪

これは明先生がミュージカル「モモと時間どろぼう」のテーマソングとして 作詞された《星の時間》です。この歌を唄うと、決して手の届かない遥かなたの星と自分とがひとつになれて、その光にやさしく包まれたような、ほーっと穏やかな気持ちになっていきます。

唄うだけでもそうなのですから、 本物の星座や真っ青な大空を見上げた時の心地よさは格別です。農耕民族だっ た日本人は、朝起きるとまず、空模様を見ることから一日が始まりました。 「おてんとう様のおかげ…」と、空を見上げる動きは当た り前に昔の生活にはあったのです。 

でも、今はどうでしょう? 空を見上げるどころか「おはよう」と言うより、パ ソコンを立ち上げることが先決になっていませんか?このように自然や人との 語らいよりパソコンなどと向き合っている 時間の方が圧倒的に多くなっている現 実があります。こんな生活が続くと、私た ちの体や心はいったいどうなっていくので しょう? 

● 心を見る目と、心を失った目 

ところで「目は口ほどにものを言う」と言われますが、内息傾向の強い日本 人は思いを胸に秘め、多くを語らないことが美徳とされた時代もありました。 でもその代わりに目によって自分の思いを伝え、また相手の気持ちを目から読 み取ることを得意としていたかもしれません。

赤ちゃんは言葉こそ話せません がジーッと相手の目の中を覗き込むように見つめながら懸命にその奥にある心を知ろうとします。 

しかし、次第に言葉や文字が使えるようになると、コミュニケーションの手 段をそれだけに頼ってしまって、息遣いや目、顔の表情から相手の心を読み取 ることが不得手になっていく傾向があります。つまり”心を見る目”の力が弱まっ ていくのです。

これでいいのかな?と思い出すのは、手塚治虫の 漫画「火の鳥」に出てくる、黒い瞳が入っていない目をした人間たちです」 最初それを見た時、私は背筋がゾーッと寒くなりました。人の心を無くした人 間を、彼は目で表現していたのです。それを見ながら、これは漫画の世界だけで なく、いつか気づかぬ間に私たちの周囲は白まなこの人間ば かりでいっぱいになるのでは…と思ったほどでした。 

そこで今日は、黒い瞳がキラキラと輝き、暖かい心を伝えあうことができる 目をゲットするための方法をご紹介したいと思います。 

● やわらかい目になりましょう 

実は心の悩みでボディートークのプライベート・レッスンを受けられる方の目に触れさせていただくと、エーッと驚くほど固く、まぶたを閉じて眼球 を上下に動かしてもらっても、上に動きづらい方がいらっしゃいます。目も心 も動かない状態です。そういう方には体ほぐしの後に、次の二つの方法をおす すめしています。そのひとつは ≪目をあたため、ゆっくり動かす≫ことです。 

まず両まぶたを閉じて、その上からそっと手で触れてみます。その目が半熟 卵のようにやわらかければ大丈夫。反対に固ゆで卵のようであれば要注意です。 固かった方は、 

1 あったかハンドをつくり、それをまぶたの上にあてあたためます。(熱い蒸しタオルでもOKです)

2 あたたかくやわらかくなったら、まぶたを閉じたままゆっくり牛やカラス の声を出しながら、ゆっくり眼球を上下左右に動かしたり回します。こう していると徐々に目が柔らかくなり、動きもスムーズになっていきます。 すると体からフーッと余計な力が抜けて、頑なになった心も緩んできます。 

● 自分の身を守る目の力もうひとつのお勧めは “夜空の星や月を見る”ことです。 

1 遠くのものを見る 

2 顔をあげて見上げる

この2つの動作によって息が深く、心が安らぐ効果があるからです。

 目が見えるということはありがたいことですが、近くのものばかりを見続けていると眼球を支える筋肉の収縮が固定化されて、固くなり疲労します。そして 遠くのものを見る機会が少なくなると、次第に遠くを見る目の力も、また見えているものが何であるかを、識別する能力も落ちていきます。 

野生の動物にとって見えたものがエサであれ、危険なものであれ、遠くにあ るものをいち早くキャッチして見分ける能力は、自分の身を守りたくましく生 きていくために欠かすことのできない力なのです。その大切な目は、夜に充分に 休ませているからその働きを保つことができるのです。

子どもの頃に野山や海 辺と視野が広がる場所で目を動かし思いっきり遊ぶことや、夜はなるべく光の 届かないところでよく目を休ませてあげることの大切さがここにあります。 

● 縦方向の目の動きは深い息をつくる 

《夜空を見上げると》の効果は、アクビを考えるとよく分かります。アクビ をする時、思い切って両手を上へ伸ばし、アゴも上にあげ、口を大きく開いて 「アー」と声を出すでしょう。そうやると横隔膜が広がり、息が体にたくさん 入っていることを体は本能的に知っています。

夜空の星を見つめるだけでもア クビ効果があります。それに月や星の光は太陽ほど眩しくありませんから、 長時間でもゆっくり見上げていることができるでしょ? だから♪おだやかな気持ちが満ちあふれる〜♪ほどの深い息になっていくのです。 

深い息は、縦方向の目や顔の動かし方やイメージの持ち方で作られていきます。 祈りの息は、どの宗教でも天を仰ぎ地に伏せ、神と自分をつなぐ上下動の縦の息です。お経、讃美歌、コーランなどを繰り返し深い息にしながら、響きを頭 から足下へ通し、体を整え心を整えようとした先人たちの知恵は素晴らしいで すね。

でも、パソコンやメールの文字は横書きで、ほとんどが左・右に目を動 かすので、横の息になり、下へ降りずに浅い息になります。舞踊の世界では、 目を左右に動かし“周りの人の心をさぐる”表現をします。

としたら、一日中 パソコンを相手に仕事をしている方に「是非、生活のどこかに縦方向の目の動きや息遣いを!」と思わずお勧めしたくなってきます。

「心を伝え合える目は、やわらかく、あたたかい目。やわらかい目とその目から注がれる「あたたかいまなざし」は、月や星の光のようにやさしく穏やかで す。赤ちゃんはそのあたたかいまなざしに包まれ、すくすくと成長していきま す。そしてそれは赤ちゃんだけでなく、あなたも私も誰もを幸せにする宝物です。 

今夜そっと夜空を見上げてみませんか? 春の星たちが、あなたとのお話しを待っていますよ。 

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