赤ちゃんは一人ほぐしの天才!! だけれど・・
「アヴァ〜 フム〜 フム~ ムゥ〜」かわいい声を発しながら、赤ちゃんはいつも全身をムズムズさせています。おっぱいを飲む時も足をピンピン蹴ったり…。 笑ったり、泣いたり、むつかしそうな顔をしたりする表情は、ずっと見ていても飽きません。
赤ちゃんはこのような動きをすることで、心と体に悪いものを積極的に体の外に出し(汗・尿・涙など)、体の内がいつもスッキリと楽になるようにしているのです。
最初は寝返りも一人では出来ず、大人から見たら、ずいぶん不自由に思えるのですが、それでも動かせるところはセッセと動かし続ける赤ちゃん。だから、すくすくと成長していけるのですね。
ムズムズ運動だけでなく、時にはびっくりするほどの大声で、真っ赤な顔になって、 全身を震わせて泣くこともありますが、これもまた赤ちゃんにとって、とても大切な動きです。そう考えると《電動ゆりかご》ってどうなのかな?って思っています。
赤ちゃんを抱く時は、赤ちゃんの泣き声や表情を見ながら、これでいいのかな?と色々工夫してゆすったり、あやしたりします。電動ゆりかごには、そんな気持ちにはお構いなしに動かすのですから…。
こうして便利さを装いながら、赤ちゃん の頃から誰もが持っていた《自分の身を守るための営みとしての、自然動(無意識レベル)》を奪っていく文明の利器が、私たちの周りには溢れています。ですから、も う大人になる頃にはすっかり、この蠢動レベルでの動きを忘れてしまっている人が多いのです。
でも大人になって、ボディートークで丁寧に一人ほぐしを続けていたら、 この眠っていた力が蘇ってきたという嬉しい報告がありましたので、お伝えしたいと思います。
数年前、熊本県宇城市で、町主催のボディートーク・リーダー養成講座が始まりました。当日 40~50 名の参加者の中に、年配の女性がいらっしゃいました。
重度のリウマチで、体は硬くなってほとんど動けなくなり夜眠っていても、あまりの痛さのため、すぐに目が覚めてしまうという状態だったそうです。病院でも「薬以外、もう治療法はナシ。他人が体をほぐすなど、かえって動きすぎて危ないので、自分で動くところだけでも動かして下さい。」との指示を受けていたそうで す。
「よ~し、それじゃ、私にはボディートークの動きがある!! 声を出しながら一人でセッセと動かしてみよう!!」と、その時、明るい気持ちで決心されたそうです。ほんのわずかに動くところを探し出し、ゆっくりゆっくり、焦らず、 少しずつ少しずつ、気楽にあきらめずに暖め、揺すり、蠢き続けられたそうです。
そしてこの4月、「先生お久しぶりです。ホラ!見て下さい。こんなに動ける様になったんですよ。ホラ!こうやってココも、ココも、よく動くでしょう」と、次 から次へと、喜びにあふれた笑顔で動いて見せて下さいました。「本当にボディー トークに出会って良かったです」6~7 年前を知っている仲間達も、彼女の変身ぶりに感動、脱帽です。
「私は一人暮らしです。ですから、家族が体ほぐしをしてくれるということはありません。でも、一人でセッセと動いたんですよ」と、その声はとてもすっきりと、さわやかでした。
その後元気になられ、3年前からは町のボディートーク・サポーターのメンバーに加わり、今年が再度始まるリーダー・ 養成講座に受講生として参加。マタニティを始めとする町の健康事業の担い手として、活躍される予定です。寝返り、ハイハイ、そして何十回、何百回と失敗し、転んでも決してめげず、懸命に立とうとする赤ちゃん、歩こうとする赤ちゃん。彼女の努力には、そんな赤ちゃんの姿と重なるほどの《体の奥底から燃えてくる生命の熱さ》を感じました。
そして、《苦しい時も、悲しい時もあきらめず、ひたすら自分の生命に暖かい息でよびかけ、やわらかい手のぬくもりで包んであげてごらん》そんなメッセージが、私の心に改めて拡がっていきました。