子供の心に焦点を当て真正面から共感する 2
ガス漏れの原因を突き止める
家庭内の暴力はまず親から
水中で息を止めて潜っている苦しさは誰しも経験があるだろう。その息苦しさも自分の意志で潜るのであれば恐怖感がないのだが、友人に頭を押さえつけられて沈められたりすると、遊びだとわかってはいても、真剣にもがいてし まう。
また、子供の頃に悪ふざけでふとん蒸しなどをして遊んだが、された方は息が出来なくなるという恐怖感から思わぬバカ力で暴れ回ったものだ。
人は息が詰まって呼吸が出来なくなる瞬間、理性では、 おうよそ考えられないような行動に出てしまう。
自殺の場合もそうである。私は十二階建 てのマンションに暮らして いるが、この屋上から時たま飛び降り自殺がある。夜中に遠方からフラフラとやって来て屋上に登るらしい。自殺する人は死に場所を求めてウロウロすると言われているが、むしろ死ぬ瞬間を求めているのではないか?
息が極度に詰まった瞬間だからこそ思い切って飛ぶことができるのではないか? 私は時々屋上から下をのぞいてみてそう思う。息に余裕があれば見下ろすのも恐ろしくて、到底飛び降りる勇気など出て来ない。
家庭内暴力はこの息苦しさから起こる。暴れる子供は肩甲骨と肩甲骨の間が詰まっています。 肩身の部位を極端に詰めている。自分が受け入れてもらえない不満や切なさが積もりに積もって、体の内からギュッと肩身を狭めているのだ。肩身は呼吸器官の場所だから、 ここを詰めると息は重く苦しくなる。
家庭内暴力は暴力行為そのものを押さえようとしても解決はしない。ガス漏れに例えて言えば、暴力行為はガス漏れ監報器である。ガスが漏れているから鳴っているのであ る。それをうるさいからと止めてしまっては肝心のガス漏れを防ぐことはできない。
むしろ警報器は鳴るがままにしてガス漏れの原因を突き止めることが第一である。ガスが出なくなって初めて警報器も鳴らなくなるのであって、即ち警報器は原因究明の道案内なのである。「ピーピー」音は決して騒音でもなく敵でもない。
このように考えれば、暴力行為は家庭内に或いは親子間に重大な問題があるぞという警報である。初めの警報は小っちゃなものである。本当はその時点で親は子供に心を開き、まともに向かい合わなければならない。親の主張は一旦差し控えて、先ず子供の言い分を徹底的に理解しようと努めなければならない。
前回より述べているA青年の場合は、親は警報器を止めることに躍起になってしまって、ガス漏れを放置してしまったのだ。日々ガス漏れは大きくなるので警報器は更にうるさく鳴り続ける。一年間もエスカレートし続けた場げ句、思い余って警報器を壊してしまったという結末である。
この悲劇的な、善良な両親には非常に酷であるが敢えて言おう。息子の暴力行為の原因は親にあるのだ。そして問題解決の糸口は圧倒的に親の側にある。 子供の非行問題で相談に来られる方があるが、親は非行のみに心を奪われ ていることが多い。
「まず親がボディートークに通いなさい」と言うと、「いえ、悪いのは子供ですから、子供を来させます」と答える。親 が変わらなければ子供は変わらないのに・・・。
従ってA青年の場合には、ボディートークではまず 母親の「背中ほぐし」から始める。肩身をほぐし、息の道をつけると、母親は息子を受け入れる余裕が出て くる。母親の息が和らげば、息子の息も少しづつほぐ れる。
母親の息が変わるだけで息子の暴力行為は少しづつ小さくなると思うが、次に父親の「背中ほぐし」に入 る。原因は父親の頑固さにあるので「ガンコほぐし」には少し時間がかかるだろう。
父親の心や体がほぐれ、息子の話も聞いてやろうという姿勢が出てくれば、家庭内暴力は収まる。その頃には親子でボディートークに 通いながら、体ぐるみのコミュニケーションが出来るようになっているだろう。
こうして息をほぐして緊急事態を切り抜けた ところで、いよいよ親子の話し合いによる、本当の問題解決が始まる。