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「生きることにマメ」シリーズ №4

元気になるためにチョットした工夫④

創造的に生きるということは、人間だけに与えられた特権です。その為の豊かな知恵がボディートークだと考えています。

そして一生かけて人生の見事な花を咲かせるのが、私の生きがいとなっています。私たちが人生の花を咲かせるには、毎日の積み上げが大事だと思っています。ボンヤリ過ごすだけでも一日は終わってしまいますが、一瞬一瞬を大事に考えて、一歩一歩良い人生へ向かう努力をしていると、たとえ短い一生であっても大きな成果ができようというものです。

“今日はどんな花で咲こうかな”
ポピーの花を5つ添えて増田明名言集を作っていますが、その一つとして人はそれぞれの人生があって、それぞれの美しい花を咲かせて欲しいと私は願っています。
            
●しなやかゴミ拾い
高齢者対象の講習会で、一人の男性の質問がありました。「最近、かがむことができなくて、靴下が履けない。どうすればいいのでしょう」そのちょっとした身振りで私にはピンとくるものがありました。

それで「ちょっと膝の裏の力を抜いて、両手を床につけて下さい」と言いましたら、その人は何の問題もなくしゃがんで両手をつきました。私は続けました。「その姿勢で片膝をついて靴下を履いてみて下さい。「ああ、そうか」と、その人は当たり前に靴下を履く動きをしました。靴下が履けなかったのは、膝を突っ張っているためにかがめることが難しくなっていただけのことです。

ここで皆さんにおすすめしたいのは、膝の突っ張りを瞬時にリラックスする意識を持つことの大切さです。立った姿勢から、まず膝をゆるめて、次に腰をかがめて頭をぶら下げて、床に落としたものを手で拾う動きです。「ふわ~ん」と、この順番にかがむと、まるで体を折りたたむように、しなやかに床に落ちたものを拾うことができるのです。

そして立ち上がる時は、頭を上げながら膝を伸ばしていき、それにつれて腰を伸ばしていくと、まるで魔法がかかったようにしなやかな身のこなしができるのです。膝は無意識の中で突っ張ってしまいがちですから、日常生活の中で、時々膝をホッホッと、ちょっとゆるめることを心がけてください。
           
●手・足・体ナデ
朝、目覚めると、私は乾いたタオルでふんわりと軽く手のひらを撫でます。足の裏も同様に撫でていきます。そして下着を脱いで全身をタオルで撫でます。こするのではなく、そっと素早く撫でるのです。

10分ほど全身をタオル拭きしますと、いつの間にか全身がホカホカと温くなります。きっと体中を包んでいる毛細血管の流れが良くなるからでしょう。特に手のひらや足の裏に神経も細やかに張り巡らされているので、その神経がやわらかな刺激を受けて活発に働いてくれるのではと考えています。

「やれ打つな 蠅が手を擦り 足を擦る」の小林一茶からヒントをもらって始めたことですが、ハエの場合は手を擦ることを、手を合わせて拝んでいるとみたの
です。ハエが手を合わせて、殺さないでと命乞いをしているように感じてできた句だと思います。でも現代の科学では、ハエの6本の足の裏には繊毛がたくさん生えていて、その毛の中のホコリを取り去っている動きだとみていますから、決して命乞いをしていることではないのです。

●肩の荷おろし
人間は元々、四つ足動物から進歩して類人猿となり、やがて更に進化して人間となりました。その証拠に、内臓は直立二足歩行用に発展したというより、むしろ四つ足歩行であった構造を残しています。

四つ足動物の前足は人間では手と呼ばれるようになり、歩くことは足に任せ、手は自由に動かしたり、物を作りだしたりするので、手と足の役割は、はっきりと異なっています。それで手が器用に動く分だけ、手の根元である肩が無意識に構えをつくるようになったのです。

何事かを為さんとする思いが常に働いて、人は無意識に肩を緊張させています。そういうわけで、構えのために肩に力が入る分だけ、腕や手の器用さは制限されます。

私はバイオリニストですが、肩に力が入ったままバイオリンを弾くと、音が固く、自由自在に弓を扱うことができにくくなります。それで一日の中で気が付けば肩の力を落としてリラックスすることを心がけています。どんな仕事にも肩をおろして腕や指をやわらかく保てるようにしていることは大切です。




スピーチ,その他であがらないために

スピーチでアガッてしまったという経験を誰しもがお持ちだろう。声はふるえるし、膝はガクガクする。手のひらや足の裏、わきの下などに汗がタラーッと流れて、頭の中はまっしろとなる。こういう経験はできることなら、したくはないが、その場に立つとどうしようもない。
 

一口にアガルと言うが、では、一体何がアガルのか。実は息なのだ。緊張のあまり息が上がるのである。脳は緊張のイメージができると、呼吸筋が収縮する。

呼吸筋はミゾオチを中心に収縮するので、息はそれより下へ降りることができない。だから息は浅くなる。アガッた息というのは早く、激しく、不規則で、浅い息なのである。

早い息は動きを速くさせる。それに不規則な筋緊張が加わると、行動がとっさに出てしまう。さらに息が浅いと、思考力はあまり働かない。それでアガッてしまうと思わぬことを口走ってみたり、とんでもない失敗をやらかしてしまうのである。

息が上がれば降ろしてやればいいのだが、言うは簡単、行うは難しである。アガリをふせぐために人は胸に手を当てて深呼吸をしたり、会場の人をカボチャが並んでいるんだと思い込もうとする。

手のひらに「人」と書いて飲み込むマネをするおまじないまである。それではボディートークではどのようにするか、息を降ろす一例を述べよう。

講演会場へ車で出掛けた時のことである。大阪の北部、猿で有名な箕面山のドライブ・ウェーを通る予定であった。麓まで来て、私はどこをどう勘違いしたのか、旧山道に入ってしまった。山道といえども観光旅館やo店の立ち並ぶにぎやかな道である。

それでうっかりしていたのだが、行くほどに道が曲がりくねり、幅も狭くなってから、やっとコースの勘違いに気がついた。
引き返そうかとも思ったが、百メートルほど上方にドライブ・ウェーが見える。

ひょっとしてこの山道をさらに行けば、ドライブ・ウェーに続いているのではないか。道幅は車一台でもう一杯というほど狭いが、タイヤの跡も残っている。行ける!と確信して私は強引に進んだ。
最後は急な坂ではあったが、ドライブ・ウェーは目前に迫り、道はまもなく合流するはずだ。やれやれと一安心して急坂を登り切った。その上りきった道の真ん中に太い鉄パイプが3本、打ち付けてあった。通行止めである。

ドライブ・ウェーをスイスイ流れていく車を目前にしながら、私の頭はガンと石のように固くなり、動悸は激しく、背中に冷たい汗がツーと走った。万事休すである。
 

引き返すしか方法はない。結論は一瞬のうちに出たが、しまった、と激しく後悔しているから息はアガッている。アガッた息で行動すると、今度は車の運転そのものが危険である。こういう時こそ、ボディートークの出番である。

私は車を降り、「アー」と発声しながら腰をブルブルと揺すった。ボディートークの「声ゆすり」である。数回行えば息は降りる。その間十秒。あせった心や体のこわばりは瞬時に消えた。

そして心の中で、自分の今、置かれている状況を肯定的に認めた。「そうか、この忙しい最中に、神様はドライブ・テクニックの練習をさせてくれている」
気分はすっかり楽しい方に変わった。窓を大きく開き、腰から後ろへ振り向いて、口笛を吹きながら、私は狭い急坂をバックで下り始めた。

アガッた息を元の落ち着いた状態に戻すには、ボディートークの「声ゆすり」が有効である。私は講演の直前に控え室でこれを行う。すると息が楽になるので、歩き方もスムーズになる。
実は、壇上に立つ人がしゃちほこ張って固い声で話すから、会場の空気も固くなるのだ。

控え室で体をゆすり、楽な息で壇に登り、そのままの息であいさつを始め、すぐに本題に入る。これが私のアガリ防止法である。




夜の星を見上げてごらん

空を見上げると 

♪ 星空を見上げると

      何故かしらおだやかな 

         不思議な気持ちが満ちあふれる〜 ♪

これは明先生がミュージカル「モモと時間どろぼう」のテーマソングとして 作詞された《星の時間》です。この歌を唄うと、決して手の届かない遥かなたの星と自分とがひとつになれて、その光にやさしく包まれたような、ほーっと穏やかな気持ちになっていきます。

唄うだけでもそうなのですから、 本物の星座や真っ青な大空を見上げた時の心地よさは格別です。農耕民族だっ た日本人は、朝起きるとまず、空模様を見ることから一日が始まりました。 「おてんとう様のおかげ…」と、空を見上げる動きは当た り前に昔の生活にはあったのです。 

でも、今はどうでしょう? 空を見上げるどころか「おはよう」と言うより、パ ソコンを立ち上げることが先決になっていませんか?このように自然や人との 語らいよりパソコンなどと向き合っている 時間の方が圧倒的に多くなっている現 実があります。こんな生活が続くと、私た ちの体や心はいったいどうなっていくので しょう? 

● 心を見る目と、心を失った目 

ところで「目は口ほどにものを言う」と言われますが、内息傾向の強い日本 人は思いを胸に秘め、多くを語らないことが美徳とされた時代もありました。 でもその代わりに目によって自分の思いを伝え、また相手の気持ちを目から読 み取ることを得意としていたかもしれません。

赤ちゃんは言葉こそ話せません がジーッと相手の目の中を覗き込むように見つめながら懸命にその奥にある心を知ろうとします。 

しかし、次第に言葉や文字が使えるようになると、コミュニケーションの手 段をそれだけに頼ってしまって、息遣いや目、顔の表情から相手の心を読み取 ることが不得手になっていく傾向があります。つまり”心を見る目”の力が弱まっ ていくのです。

これでいいのかな?と思い出すのは、手塚治虫の 漫画「火の鳥」に出てくる、黒い瞳が入っていない目をした人間たちです」 最初それを見た時、私は背筋がゾーッと寒くなりました。人の心を無くした人 間を、彼は目で表現していたのです。それを見ながら、これは漫画の世界だけで なく、いつか気づかぬ間に私たちの周囲は白まなこの人間ば かりでいっぱいになるのでは…と思ったほどでした。 

そこで今日は、黒い瞳がキラキラと輝き、暖かい心を伝えあうことができる 目をゲットするための方法をご紹介したいと思います。 

● やわらかい目になりましょう 

実は心の悩みでボディートークのプライベート・レッスンを受けられる方の目に触れさせていただくと、エーッと驚くほど固く、まぶたを閉じて眼球 を上下に動かしてもらっても、上に動きづらい方がいらっしゃいます。目も心 も動かない状態です。そういう方には体ほぐしの後に、次の二つの方法をおす すめしています。そのひとつは ≪目をあたため、ゆっくり動かす≫ことです。 

まず両まぶたを閉じて、その上からそっと手で触れてみます。その目が半熟 卵のようにやわらかければ大丈夫。反対に固ゆで卵のようであれば要注意です。 固かった方は、 

1 あったかハンドをつくり、それをまぶたの上にあてあたためます。(熱い蒸しタオルでもOKです)

2 あたたかくやわらかくなったら、まぶたを閉じたままゆっくり牛やカラス の声を出しながら、ゆっくり眼球を上下左右に動かしたり回します。こう していると徐々に目が柔らかくなり、動きもスムーズになっていきます。 すると体からフーッと余計な力が抜けて、頑なになった心も緩んできます。 

● 自分の身を守る目の力もうひとつのお勧めは “夜空の星や月を見る”ことです。 

1 遠くのものを見る 

2 顔をあげて見上げる

この2つの動作によって息が深く、心が安らぐ効果があるからです。

 目が見えるということはありがたいことですが、近くのものばかりを見続けていると眼球を支える筋肉の収縮が固定化されて、固くなり疲労します。そして 遠くのものを見る機会が少なくなると、次第に遠くを見る目の力も、また見えているものが何であるかを、識別する能力も落ちていきます。 

野生の動物にとって見えたものがエサであれ、危険なものであれ、遠くにあ るものをいち早くキャッチして見分ける能力は、自分の身を守りたくましく生 きていくために欠かすことのできない力なのです。その大切な目は、夜に充分に 休ませているからその働きを保つことができるのです。

子どもの頃に野山や海 辺と視野が広がる場所で目を動かし思いっきり遊ぶことや、夜はなるべく光の 届かないところでよく目を休ませてあげることの大切さがここにあります。 

● 縦方向の目の動きは深い息をつくる 

《夜空を見上げると》の効果は、アクビを考えるとよく分かります。アクビ をする時、思い切って両手を上へ伸ばし、アゴも上にあげ、口を大きく開いて 「アー」と声を出すでしょう。そうやると横隔膜が広がり、息が体にたくさん 入っていることを体は本能的に知っています。

夜空の星を見つめるだけでもア クビ効果があります。それに月や星の光は太陽ほど眩しくありませんから、 長時間でもゆっくり見上げていることができるでしょ? だから♪おだやかな気持ちが満ちあふれる〜♪ほどの深い息になっていくのです。 

深い息は、縦方向の目や顔の動かし方やイメージの持ち方で作られていきます。 祈りの息は、どの宗教でも天を仰ぎ地に伏せ、神と自分をつなぐ上下動の縦の息です。お経、讃美歌、コーランなどを繰り返し深い息にしながら、響きを頭 から足下へ通し、体を整え心を整えようとした先人たちの知恵は素晴らしいで すね。

でも、パソコンやメールの文字は横書きで、ほとんどが左・右に目を動 かすので、横の息になり、下へ降りずに浅い息になります。舞踊の世界では、 目を左右に動かし“周りの人の心をさぐる”表現をします。

としたら、一日中 パソコンを相手に仕事をしている方に「是非、生活のどこかに縦方向の目の動きや息遣いを!」と思わずお勧めしたくなってきます。

「心を伝え合える目は、やわらかく、あたたかい目。やわらかい目とその目から注がれる「あたたかいまなざし」は、月や星の光のようにやさしく穏やかで す。赤ちゃんはそのあたたかいまなざしに包まれ、すくすくと成長していきま す。そしてそれは赤ちゃんだけでなく、あなたも私も誰もを幸せにする宝物です。 

今夜そっと夜空を見上げてみませんか? 春の星たちが、あなたとのお話しを待っていますよ。 




とっさに出る声は命を救う

これまではボディートークの第一分野である自然体運動法について述べてきた。今回からは第二分野である呼吸法・発声法について話を進めようと思う。

息によって声は発せられる。人によって息の仕方は様々であるから、声は個性的である。だから声を聞けば誰がしゃべっているか判断できる。声はその人の骨格や姿勢によっても規定されるし、またその人の育ち方、考え方やその時々の心の状態をも反映しているからだ。

すなわち、心と体の両面を表すのが声である。その意味で声のあり方は生き方と重大な結びつきを持っている。自分自身の息の仕方や声に気づき、そのクセを正し、さらに開発して気力や行動力を身につけるのが、ボディートークの呼吸法・発声法である。

十数年前のことだ。大阪の阪急電車のある駅で痛たましい事故があった。一人の女子高校生が線路に落とし物をしたらしく、自らプラットホームを降り、線路上でウロウロしていた。

電車が近づいてくるのを知って、少女は急いでプラットホームに両肘をついた。懸命に上がろうとしたが、体が持ち上がらない。

翌日の朝日新聞は「現代人はここまで冷たくなったのか」と言う見出しをつけて、トップでこのニュースを報道した。私は新聞でこの事故を知り大きなショックを受けながらも、はたして現代人の心が冷たくなったのかどうか、ふと疑問に思った。

そして、なぜ、まわりの人は少女を救えなかったのか、現代人は他人に無関心といわれるけれど、その奥にあるものは一体、何なのかと考え込んでしまった。

どうしてプラットホームにいた人は走って行って少女を引っ張り上げなかったのか。逆になぜ、少女は一声「助けて!」と叫ばなかったのか。両者は共にしなかったのではなく、できなかったのだと私は思う。

これは私の推論であるが、少女は多分スカートをはいていたのだろう。もしスラックスであれば、プラットホームの高さは高校生にとってたかだか胸あたりだから、なりふり構わずに足を振り上げてなんとか上ってきただろう。ところがあいにくスカートだったためにちょっと行儀よく両肘をついて体を持ち上げようと試みた。

そうしてもがいていれば、きっと誰かが駆け寄って、引っ張ってくれるという思いが心の中にチラッとよぎったかもしれない。でも少女の命の助かる可能性のある貴重な数秒間に助けを求める一声もなく、動作もなく、自力ではい上がろうとしたのだ。

では、少女が危ない!と気づいた人はどうしたのか。その心の動きを考えてみた。少女は自分で上がろうとしている。若い元気な子だから手を貸さなくても大丈夫、と行動を起こさない自分をまず納得させる。次に電車が迫ってくる瞬間には、助けなければ、と思っただろう。

しかしその時、自分が真っ先に手を出さなくても、一番近い人が引っ張りあげるのではないか、と一瞬ためらいがあったのではないか。少女の側もまわりの人の側も、この他に働きかけない消極的な態度、心の固いガードが、とっさの時に必要な体の動き、声掛けを封じ込めたのだと思う。

いざという時にタイミングよく必要な動作が出たり、声が出たりするためには、日頃から身のこなしをよくし、声が楽々と出るようにしておかねばならない。スッと動きや声が出ることをボディートークでは「道がつく」という。体の道、声の道をつけようというわけである。




お気に入りのゆりかごでねむりましょう

⦁ 一 日頑張ったごほうびに
   ♪ ゆりかごの歌を   カナリヤが歌うよ
       ね~んねこ   ね~んねこ  ね~んねこよ~

スヤスヤと大好きなお母さんの胸に抱かれ眠る赤ちゃんの寝顔。 いつ見ても
いいものですね。 人生の三分の一、 もしくは四分のーは眠りの時間。≪寝てしまえばどこにいても同じ≫という考えもありますが、 この時間を一 日 一生懸命頑張った自分へのご褒美の時間としてプレゼントするという発想はいかがでしょう?

おフロにゆっくりと入った後は、 お母さんの胸の中のような、たっぷりと安らぎのある≪特性ゆりかご≫をあなたの為に準備してあげるのです。

● お気に入りのものに囲まれていますか?
ある月例会で明先生が、 「 皆さんはお気に入りのものに囲まれて眠っていら
っしゃいますか?」と尋ねられたことがありました。
あなたはいかがですか?
≪お気に入りのものばかりに囲まれている≫と誰だって嬉しいですね。 嬉しいと息はあたたかくなり、 満足感でフーッと深く降りた息になります。

すると頭も心も体もリラックスして心地良い眠りにつけます。 反対にイヤなことや緊張が続くと人の息は冷たく体は固くなっていきます。 そういう状態だと、 眠ってはいるものの充分に疲れが取れず、 頭も心も何だかスッキリしません。 もちろん毎晩、大好きな人に体ほぐしをしてもらえばいいのですが、 そうできないのが現実です。

ですからそんな時、 ちょっと気持ちを切り替えて、 積極的に自分の囲りをお気に入りの空間、 時間、 お気に入りのものばかりにしていくのです。 それが≪あなたの為の特性ゆりかご≫というわけです。

● 昔の人はマメだった
考えてみると昔は、扇風機も冷房も暖房も無かったので、≪心地よく暮らす 工夫≫をすることにマメだったかも知れません。夏になると、風は入るけれど 虫が入らぬようにカヤをつり、寝ゴザを敷いて涼をとっていました。寝ゴザの イ草の匂い、虫や風鈴の音・・・カヤに入ると何とも言えない自分が包まれた安心感があり、採ってきたホタルをカヤの中に放すと、ホタルの光が飛び交い、それを見ながらいつの間にか眠ってしまう。今思うと、何と風情のある贅沢な生き方だったなぁと懐かしくなります。

● お気に入りのゆりかごづくりは楽しいよ
もちろん私は、お気に入りのものばかりに囲まれて毎晩「あ~幸せ」と、ご機嫌 でフカフカのお布団にくるまっていますが、ただ残念なことは今は都会の 真ん中に住んでいて、四季折々の風や花の香りが漂ってくるような環境ではありません。それでせめて自然の匂いを部屋にと、観葉植物や花を置くことにし ています。

そうしないと息苦しくなってしまうからです。ホテルや病院でも、 あっという間に自分が心地良く眠れるようにアレンジしていくので、明先生も驚きです。だって≪お気に入りゆりかごづくり≫ってとても楽しいんですよ。

ホテルでは
・ベッドを移動して位置を変える
・机の上の案内パンフレットなどは、全て机の中に入れてしまう
.壁の額には自分の大判のハンカチぺスカーフをかける
・空間使いが合わない時は、椅子やテーブル、荷物を重ねて間切りにして簡易 ついたてを作り、それに自分の服やスカーフをかける。
・カーテンレールにハンガーにかけた自分の服をかける
(幸い私の服や持ち物は、ほとんどふんわりムードのもので色も淡く花柄なので、部屋のアレンジにはもってこいなのです)
.滞在が長くなる時はお花を買って飾る

入院の時は
・ふわふわの特性タオル(バスタオルも)を何枚も用意する・三つ折、四つ 折、にして高さを変えながら、肘、膝、足首の下に置く。そ うして眠ると、まるで体が空に浮いたように楽になります。
・首にも、着物襟のようにしてタオルを巻く
•手のひらに小さな赤ちゃん用のフワフワのぬいぐるみをふんわり持つ。そういうものに触れると、手のひらの筋肉が緩み、頭・心・体がよりリラッ クスでき、眠りやすくなります。

新幹線や車の中では—
・乗車したらすぐにクツを脱ぎ、ほかほかソックスに履き替える
・持っている荷物を肘下に置くと、横隔膜がリラックスして息が緩む
・大判スカーフや上着で膝や大腿部をあたためる。そこがあたためられると、足への血流が促進される。

≪お気に入りのゆりかごづくり≫の共通のポイントは、全身が羊水に包まれているようなイメージで、お気に入りにセッティングしていくことです。このお話しが少しでも、お役に立てば嬉しいですが…。このようにしていく私ですが、ひとつだけ笑い話しのようなエピソードがあります。

● 生命を再生し、元気にしてくれる大切な眠りの時間
十年ほど前に、明先生の希望でフランスのお城に泊ったことがありました。 部屋に続く長い廊下も壁も窓も、どこを見渡しても金銀がちりばめられ、まばゆいばかりの、まさに貴族の館。通された部屋も同じようにゴージャスな調度品が並べられ、よくぞこんなところで眠れるものだと感心するほどのきらびや かさ、どこも手の入れようがありません。キャンセルすることもできず、我慢 してその日は宿泊したものの、「もう頼まれても二度と行きたくないね」とニ 人で苦笑いしたものです。

小鳥や動物たちが自分の巣づくりに励むように、やっぱり自分に適した心地よい巣づくり、ゆりかごづくりは、自分の手で、自分の感性でやるのが一番だと、その時つくづく思いました。赤ちゃんの為には≪心地よいゆりかご≫は探しても、大人になって≪自分の為のゆりかごづくり≫を忘れている人は多いかもしれません。

生命を再生し、元気にしてくれる大切な眠りの時間。どうぞ、あなた自身の 生命を、あたたかくやさしく包む≪特性ゆりかご≫に乗せて、今夜も素直な夢の世界へ運んであげて下さいね。




お母さんって いい匂い

赤ちゃんは、子宮という安全で安心な世界で10ヶ月を過ごして成長していきます。そして分娩が始まり、狭い産道を通過して外界へ出てきた瞬間「オギャア」という産声をあげて、肺呼吸を始めます。


理想的な自然体分娩で誕生しますと、鼻の中の羊水も排出してしまいますので、子宮の羊水の中では働くことのなかった嗅覚が、産声とともに働き始めるのです。


赤ちゃんは豊かな五感を使いながら、新しい環境の中で懸命に生きていきますが、視覚がまだ十分に機能していない新生児にとって、特に嗅覚は自分を守るための大切な感覚となります。


生まれたばかりの赤ちゃんを、ヘソの緒をつけたままお母さんのおなかの上に乗せますと、しばらくモゾモゾしていますが、やがてお母さんの乳首にたどりつき、自ら吸い付きます。その間、ほぼ20~30分です。


赤ちゃんは未だ目は見えていませんから、専らニオイだけを頼りに進みます。お母さんの乳輪からは、特有のフェロモンが出て、赤ちゃんの案内役を務めます。


このような赤ちゃんの大切な嗅覚を守るために、赤ちゃんの部屋は、なるべく強い刺激のニオイを少なくしなければなりません。お化粧や香水はもちろん、お祝いでお花をプレゼントする時も、できるだけ優しいニオイのものを心がけましょう。


産着やオシメの洗濯も香料の少ない洗剤に工夫してみて下さい。お母さんのニオイにたっぷりと包まれていると、赤ちゃんはホッと安心をして、落ち着くことが出来るのです。ですから、お母さんのニオイを消してしまうアロマなどの刺激は、おすすめできません。


冷暖房で運ばれてくる風ではなく、ゆるやかで、さわやかな自然の風も、赤ちゃんの免疫力を高めていくことでしょう。


夜泣きが激しくて、いろいろあやしてみるものの、原因がよく分らないとおっしゃるお母さんの悩みを耳にします。一因にニオイのことがあるかもしれません。


赤ちゃんを、一人でベッドで寝かせて居ませんか?できるだけお母さんのニオイを感じる距離においてあげて下さい。お母さんのそばで、優しいニオイに包まれて、赤ちゃんは安らかに眠ることができます。おんぶや抱っこも同じです。お母さんの肌に密着できる絶好のチャンスなのですから。


鋭い嗅覚は、生命を守るための本能で、赤ちゃんの専売特許ではありません。子供にも大人にも大切な能力です。


それなのに最近、食物が腐っているかどうか、判断できない子供が圧倒的に増えています。「このお豆腐、腐ってない?」と聞かれて「自分で匂ったらわかるでしょっ」と答えると、「分からん、でも賞味期限過ぎてるよ」ですって!!


野生の動物にとって嗅覚を失うことは、自分の身が危険にさらされることに直結しています。本来は、人間も体に毒となるニオイは不快と感じていたはずなのに・・。


妊娠中は、五感が繊細に敏感になっていきます。この10ヶ月は神様が下さった『動物としての生命の感覚を、もう一度取り戻すことができる祝福の期間』なのかも知れません。


もう一度赤ちゃんと同じような感覚レベルになって、自分を包む環境を新鮮に感じられるなんて、とても素敵だと思いませんか?妊娠期をこのような視点に立って過ごすことで、自分の身にとって安全か否かを嗅ぎ分けることのできる能力がグングン高まっていきます。


更にボディートークと「体ほぐし」や「自然体運動」でマメに体に向き合うと、五感が研ぎ澄まされ、第六感も鋭くなっていきますから、子育てにも産後ケアにも大いに役立つことでしょう。




5月の風にカーネーションは揺れて

●自分をほめていますか?

この言葉は、私がボディートークの月例会やセミナーでよく言います。辛い時、悲しい時、ふんわりと繊細な手のぬくもりと暖かい息で心と体を包み、「よくやってるね」「よく頑張ってるね」とささやくように、自分に言ってあげるのです。

私がボディートークに出会って「そうなんだ!」と感心し 感動していった事の一つに 「こよなく自分にやさしくしましょう」がありました。 それまで人にやさしく」とは言われても、「自分にやさしく」など聞いたことがなかったのです。

●赤ちゃんのように泣ける

自己反省は得意で 達成目標を高く掲げ、 いくら努力しても「まだまだこのくらいではダメ!もっと!」と叱咤激励するのを良しとして生きてきた私でした。 ですからボディートークに出会って最初の頃は、体ほぐしをすると、それまでしっかり自分の心の奥に押し込めガマンしていたものが、次から次へと涙とともに出てきました。

過去の頑張っていた自分に「よく頑張ってきたね」と、自分をやさしくほめながら体ほぐしをすると、体がファ~ッとやわらかくなっていき、涙がいっぱい溢れてくるのでした。

ボディートークのプライベート・レッスンで安心でき、 体が緩むから泣けるのです。 自分の感清をそのまま素直に出せる場は、いくつになっても本当は誰にも必要なのですが、様々な人間関係の中で、そう出来ないことが多いのが現実です。

●素直な自分が戻ってくる

子どもも大人も、自分の押し込めた感情を思いっきり外に出せると、スッキリとしてきます。そして素直な自分が戻ってきます。ケンカしていても「ゴメンネ」と素直に謝れるようになったり、「どうせ私には出来ないのだから」といじけたりしていた気持ちが「もう一度やってみようかな?」というように、前向きな気持ちになれたりとか、また状況に応じて、自分の感情をコントロール出来るようになったり、他の人の為にも何かをしてあげたいというような気持の変化も起こってきます。

●お母さん 大丈夫よ!

先日、子育て・マタニティ講座でこんなことがありました。0オ、2オ、5オと三人の女の子を持つお母さんです。育児に疲れ切つていて、毎日子どもを叱ってばかり。そんな自分がイヤになり、「 もう私はダメな母親です」とウツ状態でセミナーヘ参加されました。

いつものように体ほぐしをさせていただきながら、「よく頑張って来られましたね~。大丈夫ですよ。今は疲れてきって体が固くなり、息が苦しくなっています。 でもね、体がほぐれていけば楽になりますよ。三人も子どもを産み、こんなに立派に育てて来られたのですから、大変でしたねぇ∼」とお話していたのですが、次の月には、お母さんの表情はずいぶんふっくらと穏やかになっていらっしゃいました。

そして「ありがとうございました。前回はずいぶん楽になりました。でも、暫くしてまた私が落ち込んでいましたら、5オの娘が傍に来て『大丈夫よ、お母さん!三人も子どもを産んで立派に育ててきたんだから…』と先生の口調そっくりに言いながら、私の頭を撫でてくれたんですよ。それから毎日ヨシヨシしてくれるようになったんです」と涙を浮かべながら報告して下さいました。お母さんはどんなに嬢しかったことでしょう。

親子一緒のグループレッスンですから、どの人にも体ほぐしを一人ずつ順に行います。2時間近くのあいだ、どの子も部屋を元気よく走り回りながら遊んでいます。遊ぴながらも、子ども達はお母さんのことが心配で、私の言っていることを聞いているのですね。

●「エンゼルハンズ」 ・ 「エンゼルポイス」 ・ 「エンゼルハー ト」

この講座では、子どもが ーオぐらいになっていれば私は「ネェ?こんな風にお母さんにできるかな?」とお母さんの頭をヨショヨシするように、そっと撫でてみせます。するとほとんどの子どもは「ウン、できるよ。よく頑張ったねェ~、大きくなったねェ~ 」といいながら、まるでお母さんがするように、何度も何度もお母さんの頭を撫で始めます。

その手はふんわり暖かく、やわらかく、優しく、声もソフトです。そうされる度にお母さんの表情が優しくなり、 ニコニコ顔で変わっていくのを、子ども達はちゃんと見ているのです。お母さんは そうされると、思わず「ありがとう!」と言って、その子を抱きしめたくなります。

子どもの手は小さいけれど、驚くほど大きな包容力を持っています。それは実際にやってもらうと良く分かります。ですから私はセミナーの終りに、「毎晩、おやすみなさいの前にお母さんが子どもに、また子どもがお母さんに『今日一 日、よく頑張ったね』と言いながら頭を撫でてあげてね』とお願いするようにしています。

微笑ましいこの光景が家庭で、毎日当たり前に身についていくといいなぁと思っているからです。それを実行したらどんなことが起こったと思いますか?

● エ ン ゼ ル ハートが育つ

Sちゃんは1オ4ヶ月、ようやく歩き始めた女の子です。ある時セミナーの途中で一人の お母さんが、生後3ヶ月ぐらいの赤ちゃんを部屋の隅にいて、ちょっとトイレヘ立たれました。赤ちゃんは声を上げ、泣き始めました。するとSちゃんはヨチヨチ歩きで赤ちゃんの所へ行き、赤ちゃんへ涙をふくようにとタオルを渡し、頭をナデナデしたのです。(Sちゃんは毎晩、お母さんをヨシヨシしていて上手です)

周囲の大人達はそれを見てビックリ。Sちゃんのお母さんは、兄弟でもない赤ちゃんにも思いやりの心を持てるようになった我が子の成長を見て、大喜びでした。幼い頃からエンゼルハンズ、親子で触れ合っていく子ども達には、人を思いやれるエンゼルハートも、いつの間にか自然に育っていくことを教えてくれた出来事でした。

もうじき五月。さわやかな風に赤いカ ーネーションが揺れています。一枝に寄り添つて咲く真っ赤な大きな花とちっちゃなつぼみ達。その花達の姿<ありがとうと感謝する心>や

<思いやる心>をさり気なく互いに伝え合える、暖かい親子の姿のように私には見えてきて、ほのぼのとした気持ちに滴たされていきます。




柔らかい頭を保つためには

かたくなに自分の意見を押し通そうとするガンコな人。そういう人は姿勢を見るだけでガンコだと分かる。いったい体のどこに?実は首に現われる。ガンコな人は首筋を硬直させている。

皆さんも自分の体でちょっと試してみましょう。首を後方へグッーと引いて首筋を固くする。すると自然に下アゴにも力が入る。眼筋も心なしかこわばって目つきが険しくなる。これがガンコ首である。この姿勢で「ン?」と言ってみると、固くて押しつけがましい声になる。この声で「ナニ言ってんだ、おまえは俺の言うことが聞けないのか!」と怒鳴ってみると、ガンガン、キンキン、コンクリートの塊をぶつけるような声になってしまう。だからガンコな人は電話だけでもバレてしまう。
 

ガンコは何故、首に現われるか。その理由はこうだ。私たちは考え事をするときには頭を固定する。前頭葉をフラつかせると、思考が進まないからだ。頭を固定させるには首の上部を固くしなければならない。四六時中、考え事をしていると当然首筋全体が硬直してくる。

硬直した首は容易に動かないから、この首が逆に考え方を固定してしまう。ガンコ首が石頭多いと、前回で述べたように怒りのしこりは背中の中央に出る。慢性的な怒りは背中全体を固くするから、体がやがて石のようにコチコチになる。だから石頭の人は「石体」になる。
 

ところで体が固いとか柔らかいとは、どうやって判断するのか。「最近、体が固くなってるねえ」と嘆いてる人に「固くなったとどうしてわかるのか」と尋ねてみると、「前屈しても手が床に届かなくなったし、足ももっと開いたんだがなあ」と答えがちである。前屈や開脚の出来具合が判断の基準になっている。それではお餅の軟らかさはどのようにして調べるか。

これは触ってみればたちまちわかる。人間の体も同様である。触って柔らかければ柔らかいし、固ければ固いのである。「アレッ、固いな」と感じられれば体は固いのである。太っていて、見た目にはポチャッとしていても精神的な悩みが深かったり、責任の重い仕事が続いて過労であったりすると、コチコチになっている。だから前屈や開脚ができても、実際は体の固い人はいっぱいいるのだ。
 

人間にとって大切な体の柔らかさとは中身のことである。筋肉が柔らかくて弾力性があり、血液や体液の流れがいいということが大事なことなのだ。ちなみに、犬は前屈や開脚はしない。しかし体を柔らかくする努力は絶えずしている。胴ぶるいや伸びがそれである。
 

話を元に戻そう。ガンコ首が石頭を産み、石頭が石体を作ってしまうのなら、私たちは「柔らか頭」を保つためには何をすればいいのか。小さな声で「アー」と発声しながら、首をゆっくりまわせばいい。そうすると首の上部と後頭部との接合部分が固くなっているのに気づくだろう。考えが堂々巡りをしていたり、壁にぶつかって先へ進めないような時は、特に固くなっていて痛みを感じるはずだ。

そんな時は、片手でその部分をトントンとたたいてやる。やはり「アー」と発声することが大事だ。声を出せば、振動が頭へまんべんなくいきわたるし、その振動を外へ逃がして、しこりを無理なく除くことが出来る。
頭が固くなったと思ったら「アー」と言いながら首をまわして後頭部をトントン。これが「柔らか頭」のためのボディートークである。




猫のけんかは「肩をイカらす」典型

背中は人生を物語る。去りゆく後ろ姿を見て、その人の生き方にハッと気づくことがある。表向きをどんなに取り繕っても、背中はごまかせない。心のありさまや感情が正直に表れるからだ。たとえば、怒りは背中にどのように表れるか。怒ると腹が立つ。腹が立つと言うことは、胃が硬く収縮して持ち上がることだ。レントゲン写真では、実際に胃が立ち上がったように見える。

では、胃を立ち上がらせている神経はどこからやってくるのか。実は、背中の中央、正確に言うと背骨の胸椎8番出ている。怒りの感情は、まず背中の中央を硬くさせ、その刺激を受けた神経が腹を立たせるのである。

「肩を怒らす」という表現もある。これは単に肩を持ち上げた状態ではない。もし人がヒョイと肩を上げて「怒ってるぞ!」と言ったとしても、ちっとも怖くはない。ただ、怒りのポーズを取っているだけだ。本当に怒ると、まず背中が盛り上がってくる。さらに、感情が高まると、肩もつり上がってくる。だまっていても、力が体にみなぎってくる。「肩を怒らす」とは、そのような状態を言う。
 

猫のケンカはその典型である猫は相手を威嚇するために牙をむき、毛を逆立てて背中を強く、高く、膨らませる。もちろん、尻尾もピンと立てている。この背中を硬直させることで、猫の胃も立っている。人間はもともと四つ足の動物であったから、怒りのシステムは、猫と同じである。猫が毛を逆立てるのは、背中が硬くなるからだが、人間の毛も同様に逆立つ。

赤ちゃんがイラだって泣きじゃくるときもそうだ。だからお母さんは抱っこして「よしよし」と言いながら、背中をさすってやる。母親のこの動作は本能的なものだ。その証拠に、世界各国共通にだれに教わることもなく、赤ちゃんの背中は上から下へなで下ろす。赤ちゃんが泣いているからといって、下から上へなで上げる親はいない。逆立っている毛をなで下ろすことによって背中を柔らかくさせ、いらだちを納めているのだ。
 

赤ちゃんなら、このように背中をさすってもらえるが、大人となると、なかなかそういうわけにはいかない。立った胃をどのようにして座らせるか。たいていは腹を据わらせる努力をしないで、立ったままにしているから、一度だれかに腹を立てると、まわりのもにまで八つ当たりするようになる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというわけである。
 

ある大手企業の幹部研修で講演をしたときのことだった。背中に表れる様々なしこりの持つ意味を私が話したところ、講演後、背中をみてほしいという人達の列が出来た。その中の一人に、右脇にクッキリと小石大のしこりを持った人がいた。怒りが慢性化し、被害者意識を持ち始めると、恨みのしこりへと移行する。

「これは大変だ。奥さんに対する強い恨みが出ていますよ。」と私が言うと、それまでニコニコしていたその人の血の気がサーッと引き、突然、真顔で「いや、私には妻はおりません。」とおっしゃる。「そうですか。でも、このしこりはあなたの1番身近な人のことで出るものですが・・・」「ほう、そうするとむすこのことかなぁ」「えっ?息子さんがおありなら、奥さんはいらっしゃるでしょう」「実はお恥ずかしい話、女房に逃げられましてね。」

この人は、中学生になったばかりの息子を放って実家へ帰ってしまった奥さんに強い恨みを持ち続けていたのである。このしこりを持ち続ける限り、恨みは続く。しこりを取れば、心が穏やかになって解決へ向かう余裕が生まれる。早速、うつ伏せに寝てもらってボディートークの「背中ほぐし」で恨みのしこりを取り除いた。「おかげさまで、気持ちが楽になりました。」と、その人はホッとした様子で帰って行った。




便秘の赤ちゃんをほぐすには?

今からお話しする生後十ヶ月の赤ちゃんカズアキちゃんは、産まれてからずっと便秘でした。便が順調な赤ちゃんは、1日のうちに何回もウンチの出るのが当たり前ですが、カズアキちゃんは1週間位いつも出ないので、毎回「浣腸」をしていました。 

便秘にも様々な病気や問題もあるのですが、カズアキちゃんの場合は心の問題でした。4歳のしっかり者のお姉ちゃんと、両親の4人家族です。カズアキちゃんの表情は硬く、顔色も優れません。

お母さんの背中を触ると胸椎3番と5番を詰めていました。家族関係の葛藤(胸椎5番)から息を詰め、切ない思い(胸椎3番)をしていると、判断しました。昔から「子は親の鏡」といいますが、お母さんの心そのものが、どうやらカズアキちゃんに表れているようです。 

お母さんの胸にカズアキちゃんを抱いてもらいました。そこでカズアキちゃんの背中(胸椎8番9番)や仙骨を揺らしてほぐしました。カズアキちゃんには声をかけながら行います。「動きたいよねぇ、動こう!そうそう!ほらっ!ほらっ!動けた、動けた!やったぁ!」と言葉かけをしながら動作の誘導をしていきます。なぜこの言葉かけが必要なのでしょう。 

実は赤ちゃんは胎児の時からお母さんの言葉がわかっているのです。言葉というより、言葉を「息」で感じているのです。何かをするときに必ず声をかけるのは凄く大切なことなのです。

また、仙骨を動かすのはなぜでしょう。いつも目の前を自分のお姉ちゃんが活発に走り回っているのを見ています。自分も動きたくて、動きたくて「うずうず」しているのです。その気持ちを誘導するのが仙骨の揺すりです。自分で動けないから動いている状態を作ってやるのです。仙骨を動かせるのは自分が動くのと同じ動作になるので、気分はぐんと弾みます。 

それからカズアキちゃんの足の裏に手のひらを当てて少し押します。こちらが押すと押し返してきますので、やや力を加えてこちらも少し押します。押し返してきたらその後は「ふっ」と力をゆるめてカズアキちゃんに押し返す力をつけてやります。押し返したときに「強いね!凄いね!」と、そのたびに誉めます。赤ちゃんも誉められると、これはとってもいい事なんだ、とその「息」を感じます。 

このような動きは、足を押したり蹴ったりの連動なので、腸に刺激を与えて、蠕動運動を誘導します。すると便が動きやすくなるのです。浣腸に頼っていては、ミズカラ押し出す力が養われません。排泄は物理的な毒抜きで、体の老廃物を出す効果もありますが、心の毒抜きにもなるのですから、大変大切なことです。 

それと胸の上部(ウムネ)もほぐします。お姉ちゃんは大変元気で、子供なら当たり前の事なのですが、カズアキちゃんに触ってきたりぶつかったりしてきます。もちろんの事ですが、小さいので抵抗する力がありません。そんな事で、当然イライラするし不機嫌になったり泣いたりします。

そこで「反撃!」とカズアキちゃんの左手をふんわり包んで「やっつけろ」と、こぶしを前に突き出す動作をさせました。「やっつけろ!」その時、腕だけを前に出させないでウムネを意識して突き出させます。

そうそう上手ね、大分笑顔が出てきました。「やっつけろ!」『あ、あ、』(あららら、声まで出てきました)「ボン!ボン!」あらぁお腹を揺すって元気に笑い出しましたよ。「やっつけろ!」『うぐん!うぐん!』今度はお母さんのお膝の上でお尻を上げてピョンピョンしてきましたよ。「やっつけろ!」『うぅ!うぅ!』『あ、あ、』大きな声で体ごと笑い出しました。胸のつかえが取れました。 

それとカズアキちゃんの事をみんな「カズちゃん」と呼びかけていたのですが、「カズ君!」とみんなに呼びかける事にしてもらいました。「カズ君!」この呼びかけはお腹に力が入り、気張る息になりますからウンチを誘導します。これは押し出す息です。この押し出す息を感じてカズ君は、お腹に力が入るのを感じます。 

その後は浣腸なしでウンチが1日おきにでるようになりました。今度会うときは、もっとウンチがたくさん出ていることでしょう。 

薬に頼らず、自分の体で積極的にやる運動は快感です。また動くことで神経回路が繋がっていきますので、大脳の働きも大変よくなります。