ボディートークコラム

目を注ぐ、 心を注ぐ

image_print

子守歌は歌の原点

♪ ね~むれ ね~むれ 母の胸に
ね~むれ ね~むれ 母の手に ♪

子ぎつねは、そのうた声は、きっと、にんげんのおかあさんの声にちがいない と思いました。 だって、 子ぎつねがねむるときにも、やっぱりかあさんぎつね は、あんなやさしい声でゆすぶってくれるからです。

これは新美南吉の≪てぶくろを買いに≫ の一節ですが、このシーンを読んでいると、 毎日を慌しく過ごしている自分の息が、スーッといつのまにか清らかで、穏やかな息になっていくのが感じられます。

「子守歌は歌の原点ですよ」 と明先生 がよくおっしゃいますが、それは「私の声キレイ でしょ? よく出ているでしょ?」 とか、 「上手く 歌えているでしょ?」 というレベルのものでなく、愛し子を胸に抱きながら〈目を注ぐ、心を注ぐ〉 母親のあたたかく深い思 いが、そこにあるからなのでしょうね。

● 特別な感覚、感性が冴えわたる時

久しぶりにエンゼルハンズセミナーを大阪で行いました。 このセミナ 一のメインプログラムは、もちろん〈赤ちゃんを抱く手〉。 今回も実習に、こ の中から≪あたたかく、やわらかい手≫を実習しました。

実は、〈赤ちゃんを抱く手〉のプログラムは、10 年前、明先生が糖尿病で入 院され、生命が危ういという状態で、頭が働くのは一日ほんの数十分というよ
うな状況の中で発案されました。

人は、そういう生命が極度に繊細になっている時にだけ感じられる特別の感覚・感性があるのです。 まさに先生の〈その特別の感覚・感性〉で生み出されたものが、 〈赤ちゃんを抱く手〉 なのです。 ですからセミナーで〈あたたかい手や、やわらかい手、 繊細な手、 包む手、 溶ける手〉を伝えさせていただく度に、一日一日を先生がお元気になられますようにと、ひたすら祈りながら看病させていただいたその時のことが思い出されてきます。

● やわらかい手の実習

やわらかい手の実習は、やわらかな直径7cmぐらいのゴムのボールを両手のひらに乗せ、それを投げ上げ、 落ちてくるボールを両手で受け止めるというパ フォーマンスです。 皆さんも、ボールでなくても片手に乗るくらいの軽いものを、手に乗せ、まずやってみて下さい。

セミナーでは、最初に私が「このようにやってみて下さい」と師範し、 次に受講する方達が同じように(?)トライします。実は、これまで数回開催したセミナーで、一回でこの「やわらかい手」 がOKになっ た人は、残念ながらどなたもいらっしゃいませんでした。

実は大切なポイントは≪本当の赤ちゃん≫だと思って、 ボールとお付き合いすることなのです。 だって、赤ちゃんを抱く手の実習ですからね。

私は動く時に、
1 ボールを赤ちゃんだとイメージします。 ボールの中に赤ちゃんの顔や目があるとイメージします。

2 投げる前に、「高い 高い~、やってみる?」 とボールに尋ねます。

3 そっと投げ上げ、 落ちてくる時には、なるべくふんわりと真綿の上に落ちてきたと、赤ちゃんが思ってくれるようにと、 全身で受け止めます。

4 手のひらに戻ってきたボールに、「怖くなかった? 楽しかった? もう一
度やってみる?」と尋ね、次の投げ上げを行います。

そうやってボールとお話しをすると、おのずと自分の息はあたたかく、動きはや わらかく変わっていきます。 ボールを投げている私自身が、 いつしか、まるで赤ちゃんになって「高い高ーい」とやってもらっているかのように、 心も体も弾んでくるのです。

● 心を注がれた生卵は···

もうひとつ、生卵立てのエピソードをお話しましょう。短大のボディートークの授業で、 ≪生卵立て ≫をした時のことです。 「必ず卵は立ちますよ。 決し てあきらめず、 信じて立ててみて下さい。 必ず立ちますからね」と言い、卵を渡しました。1時間近く真剣に、 あれこれ工夫をしながら、ツルツルする机の上で生卵を立て続ける学生達。

やがて、 「ウワァ~立った!」 「立った!」 とい う歓声が、教室のあちこちから聞こえ始めました。すると「ア~ッ!」と言う声がしたかと思うと、 突然、 一人の学生が泣きだ したのです。卵が転げ落ちて、割れてしまったのです。

一生懸命、「立ってね、 立ってね、立つよね」 と願い、 祈りながら手を添え、心を添え、関わっていたのですね。授業後の感想には、「自分でも、あんなに悲しいなんて思ってもみませんでした。 割れた卵が愛おしくて、可哀そうでたまりませんでした。心を込めて関わることの大切さを、卵から教えてもらいました」と書かれていまし た。

私は、この学生はきっと素敵なお母さんになるだろうな、と嬉しくなりました。学生達は自分の関わった卵に、可愛い目や口を書き、携帯で写真を撮り、 割れないようにと大事に大事に卵を持ちかえっていました。 微笑ましい光景で した。

ボールも卵も、 そこに≪目を注ぎ、 心を注ぐ≫と、まるで、 《生命がそこに あったかのように変化していく≫。 自分の心や体が、繊細にやわらかく、あた たかく変化していくその喜びは、クリスマスツリーにつけた星あかりが、 スイ ッチを入れた途端にきらきら輝き始めた時、「あ、嬉しい」と感じる、あの感 動と似ているように私には思えます。
今年も一年が終わろうとしています。 一年間頑張ってくれた、 もの、 人、そ して何より自分の生命に改めて心を注ぎ、「ありがとう!!」 と言ってあげま しょう。
Merry Christmas!! Happy New Year!!

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

PAGE TOP