ボディートークコラム

自然で素直な声

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全身を柔らかくして発声を

テレビの声は固い

テレビをつけっ放しにして他の事などをしていると、 妙にソワソワとして腰が落ちつかない。ハッと気がつい てテレビを消すとホッと息が降りるのを感じる。そんな経験を誰しも持っているだろう。

アナウンサーやタレントなどが、とりとめもなくおしゃ べりをしたり笑ったりする声はアッピールが強いのだ。 そのアッピールは積極的な息の押し出しとテンポの.. 語り口、そして声質の高さや固さからくる。その声はテ レビのスタジオでは似つかわしいのかもしれないが、少 なくとも日常の家の空気 には馴染まないから落ち着かないのだ。

一般にはアナウンサーの声は良い声だと思われ ているので、その声は固い、と私が言うと、アレッ?と思う人もあるだろう。しかしボディートークの見地からすると確かに彼らの声は固く感じられる。彼らの発声練習が固い声を作っているからだ。

アナウンサーの発声練習は演劇の方法と同じである。演劇はもともとマイクなし で多くの観客に聞こえるようにセリフをしゃべらなければならなかったので、 共鳴を多くして強い響きを必要とした。

それで息を口内へ強く送りこむために腹式 呼吸を多く使い、横隔膜をしっかりと動かそうと考えて腹筋を鍛える方向へと進ん でいった。「アエイウエオ・アオ、 カケキクケコ・カコ・・・」というような言葉を、大声で一語はっきりとて、しかもその毎に腹筋を使って強く素早くおな かをへこめる、という練習がその代表的なものである。

だいたい「ア・エ・イ・オ・ウ」という順番からして言葉に対する捉え方が狭いと私は思う。本来は「アイウエオ」という順番が自然なのである。これは全身を柔らかくして一語づつ長くのばしてみるとよくわかる。

即ち「アー! は体の上方に響くのだ。それに対して「オー」は下方に響く。「アイウエオ」は全身の上方から下方へ響きが移っていく順番なのだ。

「アエイオウ」は口の開き方の順番である。「ア」が大きく「工」は少しせばめ て横に開き、それを更に狭めると「イ」になる。唇を寄せて口の開きを小さくすれば「オ」になり、一番口をすぼませれば「ウ」になるという具合である。

私は「声の文化」として、その声が私たちの心を穏やかにし、体を楽にさせ、ま わりの犬や猫も含めて社会を平和にさせるものを探究したい。そのためには腹式呼吸にこだわることなく、全身を素直に豊かに使った全身呼吸や日本語として自然に響く声のための発声プログラムを開発し、提案していこうと思う。

発声練習その1

「まいまい」 ―柔らかい声で話すためには 下の詩の「まいまい」はカタツムリのことです。語呂合わせみたいで調子がいいですが、一字一句ていねいに読んでいきますと、ちゃんと意味が理解できます。一

1行目は「カタツムリは舞いを舞わないだろう」ということです。あとはこうなります。「カタツムリの上手な舞いをもう舞わないだろう。カタツムリは目まいの病気なので、カタツムリへの毎度毎度のお見舞いをかかさないでおこう」

発音練習としてはまず普通に「まいまい」と言っ てください。特別に口を大きく開いたり、構えたり する必要はありません。日本語として当たり前に「まいまい」と聞こえればいいのです。 欧米の言葉はノドの奥深くから押し出すようにして発音しますが、日本語は息を スッと口内に運んで、口の前方で言葉を作ります。

従って子音の「M」も母音の 「A」も軽く発音して下さい。
「まいまい」の詩はなめらかに続くように練習して下さい。電話がかかってきた 時もこの詩を言ってから受話器を取るといいでしょう。

まいまいは

まいまうまい

まいまいの うまいまい

もうまうまい

まいまいは めまいのやまい

まいまいの まいまいみまい

かかすまい


谷川俊太郎「ことばあそびうた」より

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