ボディートークコラム

初めて会う赤ちゃんとのお付き合いは?

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初めて会った赤ちゃんと接する時の〈眼差しや息〉につい て説明しましたが、今回はボディートークの〈生命を大切にする感性〉につい てのエピソードをご紹介しながら話を進めていくことにします。

● 人を踏み台にしない!!

「肩甲骨ゆすりをしましょう」と増田先生の指示された通りに二人組になり、 うつ伏せになった相手の方の背中をまたぎ、肩甲骨を揺すろうとした時です。 「ストップ!今、あなたのやったことを最初からもう一度再現してみて下さ い!」と、いつにない強い口調で注意されたのです。

「エッ?何か、悪いことしたのかしら?」と、理由も分からずキツネにつままれたような顔をしなが らやり直してみました。「ホラ!それですよ。その方法は生命を大切にしていないやり方です。決して人の背中を踏み台にして、またいではいけません。もし下が赤ちゃんだったら、あなたはそうしましたか?」確かに私は、両手を相手の方の背中の上に置いたまま、「ヨイショ!」とまたいでいたのでした。

言われてみれば、〈ボディートークの生命の触れ方の原則〉である<ふんわりと繊細に→すっきりと大胆に→しっとりと夢中に>の視点から見ると、タブ ーなことを平気でやっていたのです。私はこの時、改めて〈自分の感性の鈍さ〉に気づき、どんな時にも“生命を大切にしていく、ボディートークの感性を素晴らしいと思いました。でもまだまだこれは初歩レベルで、もっと深い繊細な世界があったのです。

● バイオリンが教えてくれた繊細なタッチ

「これは私の父が弾いていたバイオリンだけど、弾いてみる?」と言われた時のことです。恐る恐る弓を受け取り、先生の真似をして弾いてみると、「ギィギィー」の音ばかり。

先生はニコニコとされながら私の傍に寄り、ご自分の手を私の右手にそっと包むように添えて弓を動かされました。すると、た ちまちバイオリンは美しい音色を奏で、その細やかで心地良い振動が体中に不思議な感覚で響いていったのです。音は決して耳だけで聞いているのではなく、 体の細胞全てで感じているのだという実感でした。

先生のタッチは、まるで鳥の羽毛のように、たんぽぽの綿毛のように軽やかで優しく、あたたかで繊細な触れ方でした。こんな高いレベルの繊細さがこの世にあったのかと、しばらくはガーンとショックで、そのすごさに身動きできなくなるほどの〈ふんわりさ〉でした。

生まれて初めての体験でした。そして私は今まで何と傲慢な触れ方や動き方をしてきたのだろう、生命に対して何と乱暴な生き方をしてきたのだろうと、自分に謝りたい気持ちになりました。
(40年近くクラシックバレエのレッスンで、や わらかく、繊細に動いてきたつもりでしたが…)

● 自分に優しくなれそうです

ボディートークに出会わなければ一生知ること ができなかっただろう(生命をこよなく大切にする繊細な感性〉は、こうして増田先生から教えて いただいたのです。

今私は、若いお母さんや、特に看護士、保育士、助産師さんなどを中心に〈エンゼルハンズのプログラム> を通して、このボディートークの繊細な感性をお伝えさせていただいています。 一度この繊細さを体験されると、ほとんどの方が、かつての私がそうであったように「こんな世界があったのか!」と驚かれます。(実は、ボディートーク の<一人ほぐし>も、まずこの自分に優しく触れていく感性を磨いていくためのものでもあるのです)

この世界が身についてくると、それまで無造作に見ていたものが、よりクリアに見えるようになって、次のような光景が気になって仕方なくなってきます。 ホラ、土筆を取りに行って、最初はなかなか見つけにくいのに、慣れてくるとあちこちに土筆があるなって見えてくる。きっとあの感覚と同じようなものですね。

● 赤ちゃんゴメンネ

それはなぜか、もう子育ても終わった50代ぐらいの女性に多いのですが….。 赤ちゃんを見るなり「あ~かわいい!」と、赤ちゃんの都合も聞かずに、すぐさまママの手から赤ちゃんを抱き上げてしまう人がいるのです。

お母さん同志はお知り合いであっても、初対面の赤ちゃんには突然のことで、びっくりして 、身を固くしたまま泣くこともできなくなっている赤ちゃんもいます。ママもそ の手の出し方が見事なほどに自信たっぷりで、アッという間のスピードですから、何も言えないままです。

そんなことはお構いなしに「ホント、かわいいネ ェ~」と嬉しそうにあやし続けていらっしゃる光景です。せめて赤ちゃんに 「抱っこしようか?」と尋ねたりするくらいの心遣いは欲しいと思うのですが ….。「赤ちゃんゴメンネ」って、こちらの方が心の中で呟きたくなります。 .

いつも一緒に生活していない人の〈息〉や〈声〉を赤ちゃんが〈コレは安心 だ〉と確認するには、少し時間が必要なのです。まだ目がぼんやりとしか見えていない赤ちゃんの感覚は、大人に例えれば、真っ暗闇の中で手探りで動いて
いる状態と同じなのです。

そんな時は匂いや声や周囲の気配に敏感になってい ますよね。そんな時、誰かの手が急に伸びてきて触れられたら、「キャー」っ て叫んでしまいますでしょ?

● 少しずつ少しずつ、近づいていく

赤ちゃんは何かに興味があると、それをまずジーッと見つめます。そして更 に関心を持ち始めると、赤ちゃんの方から、そ~っと そっと、ゆっくり手を伸ばしていきます。赤ちゃんとのお付き合いには、この感性が大切なんですね。増田先生のミュージカル「星の王子さま」の脚本の中にも、このことが分 かりやすく表現されています。

キツネ 「いいかい、初めて友達になるには、まず辛抱が大切だよ」
子ども 「しんぼう?」 キツネ 「最初はね、少しはなれて…」 キツネ 「そう、そんなふうに草の中に座るんだ」 ボスキツネ「そして、ワシはキミをチラッと見る」 子 「ボクもキミをチラッと見る」 キツネ全「あとは何も言わない」 と言いながら、お互いにチラッと見合いながら少しずつ、少しずつ、近づいて行きます。

王子さまとキツネさんが仲良しになっていく、ほのぼのシーンの一コマ です。 大人になると、忙しすぎてついつい忘れてしまいがちな、<ふんわりと繊細に生命へ触れる感性>でも赤ちゃんといると、自然にこの感性がよみがえってきます。

やっぱり赤ちゃんは<生命にとって大切なものを教えてくれるエン ゼル>なんですね。今日も赤ちゃんに会えるといいなぁ~。

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