皆さんは、金魚すくいは得意ですか? 蝶々採りは? この2つ には共通のコツがあるのですが… 。
金魚すくいは、自分の全身を水の精にしたイメージで、そっと金魚に枕をしてあ げるように網を金魚の頭の横にすべらせていくこと。蝶々採りは、全身を風の精にして、風のように親指と人差し指をフアッと蝶の羽根にとまるように置くことです。 そうすると、金魚は気持ちよく昼寝をするように、網の上に静かになってくれますし、蝶々も風のお風呂に入るかのように、手の中に入ってしまいます。つまり《息》と《内動》を相手と同じにすると、普段、難しそうに思えることが、楽しくスムーズにできるようになっていくのです。
これは声のレベルでも同じことが言えます。今回は声かけの大切さについてお 話してみましょう。1才5ヶ月になるR子ちゃんが、お母さんと一緒に体ほぐし講 座に来ました。どうも部屋の隅に置かれた 白板の脚(幅5cm、高さ10cm 位)の上に乗ることに興味を持ったようです。お母さんに 右手を支えてもらいながら右足で上がり、白板の脚の上でバランスをとると、今度は左足 から降りるという動作を何度も繰り返し始め ました。
そうしている内に、今度はお母さん の手を離し、一人でやってみたくなった様子です。でも、どう考えても、まだ一人でバランスはとれそうもないので、お母さんはつないだ手を離すわけにはいきません。私はそっと二人の傍により、R子ちゃんの左手を、然り気なく白板の支柱のところへ持って いきました。すると「あ〜、支柱を握ればいいのか」と分かった様子で、自分の左手で支柱をしっかりと握り締め、脚に上がりました。
しばらく見ていると、もう充分に一人で支柱を持ってバランスがとれてきました。 そこでお母さんに「少しずつR子ちゃんとつないでいる手を、緩めてあげて みたら?」と、小さな声で言いました。すると数回後に、もう立派にお母さんの手離しで、一人でやれるようになりました。
「R子ちゃん、すごい!できたね!」と、 拍手をすると、とっても誇らし気で嬉しそうです。そしてまた、何回も何回も、飽 きることなくやり続けています。
実は、私はR子ちゃんがこの動作を繰り返し始めた時、少し離れたところから、 一回ずつ「ドッコイ」(上がる時) 「ショ」(降りる時)と、やわらかな声でR子ち ゃんの動きに合わせて声かけをしていました。もちろん動きをよーく見ながら、動きやすい速さと声の強弱を加減しながらです。ちょっと危くなりそうな足取りになると、声の調子を変え、動きやすくなるよう声で支えるのです。そして1回成功する度に、「R子ちゃん、すごいね!できたね!パチパチ…(拍手)」すると、R子ちゃんも一緒に、パチパチ…と、笑顔で拍手します。これを繰り返す度 に、R子ちゃんの顔はイキイキと喜びにあふれていきます。
でも、傍らにいるR子ちゃんのお母さんからは、ほとんど声が出てきません。 「日頃、あまりこんな風に声かけしたり、拍手したりしないの?」と尋ねると、 「そうです」との答え。そこで私は、「赤ちゃんが新しいことをできる様になった らしっかり誉めてあげてね。赤ちゃんは大好きなお母さんに誉めてもらうことが、 一番嬉しいのよ」と説明しました。
子どもは、1、何度も何度も同じ動作を繰り返すことで、神経回路 (ニューロン)をつないでいく。 2 、失敗しながらも、どうしたらいいのか自分で工夫していく中で、 成功する毎に、ニューロンは強い結びつきになっていく。 3、 そのような動作学習などの時、体が動きやすいような他からの声かけや、自分で自ら声を出すことで、大脳皮質からの体への余計なコントロールが取れ、動きをスムーズにすることに効果がある。
母親が赤ちゃんの心と体と一緒になって応援してくれ、その成功を喜んでくれること。それが赤ちゃんの大きな喜びになり、次の 新し行動へ挑戦していくエネルギーとなっていく。
でも、そういう声かけにあまり慣れていないお母さんには、ちょっと最初は抵抗 があるかも知れません。
そこで、「ホラ、赤ちゃんがウンチする時、『ウーン』、オ シッコする時『シー、シー』と言うでしょ?それと同じ要領で、他の動作の時にもちょっと声をかけてみて」「もちろん、声かけは赤ちゃんの成長のためにはとっても大切なこと。日頃、子育てであまり他の人とも話す機会が少なく、昼間は赤 ちゃんと二人きりというママは、自分でも気付かない間に息をつめている事が多い の。そんなママが、赤ちゃんと一緒に積極的に、暖かくやわらかい声を出して楽しんでいくと、自分も元気になっていくよ」と、アドバイスさせていただきました。
皆さんも、《声かけの効果》に興味をお持ちになり、まずは自分の心と体や動き をスムーズにしてくれるのは、《どんな声かけかな?と、工夫してみて下さい。 きっと色々な発見があると思いますよ。
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