空を越えて~ ラララ星のかなた~ ♪
とメロディーに乗って、心優しい科学の子・鉄腕アトムは、昭和の時代を夢に向かって、子ども達の心の中を飛んでいま した。今の幼い男の子のあこがれのキャラクターは、「ウルトラマン」。全身でウルトラマンになりきるその姿は、真剣そのものです。
K君は2才の男の子。お母さんは、保育園の園長さんです。ある日、保育園での ボディートーク学習会の時間帯が、ちょうど園児達の昼食時間と重なり、K君と一 緒に園児と同じ給食のお弁当をいただくことになりました。嬉しそうに、大好きなふりかけをご飯にかけ、口いっぱいにモグモグ。
でも何故か、野菜にはちっとも手 が伸びません。特に煮た野菜のごぼうは残されたままです。「K君、お野菜が残っているよ。ホラ食べて!」とお母さんが何度も言っていますが、一向に関心を示し ません。
「これを食べないと、デザートをあげないよ」とかいうような手口には決して乗らないタイプのK君。お母さんの声が次第に苛立ちになってきます。
そこで、私は『ねぇ、K君知らなかっ た?ごぼうを食べると、ウルトラパワー アプするんだよ、知らなかった?』と、 小さな声で、耳元でささやいてみました。
『あのね、ごぼうはね、外から見えない 土の中でドンドン大きくなっていくでし ょう? だから、これを食べると見えない ところで、どんどんパワーアップしてい くんだよ。ちょっとだけ食べてみる?』 と説明すると、私の目をジッと見ながら 真剣な顔になり、「ボク食べてみる」と口を開けました。ほんのちょっぴり、口の中にごぼうを入れてあげました。モグモグ、モグモグ。これまた真剣な顔つきで、味を噛み締めている様子です。
『ねぇ、どう?ホラ、パワーが湧いてきていない?』私もK君の目をジーッと覗 きこみながら、真剣に尋ねます。「ウ~ン… あ、湧いてきた!」と、K君は息をいっぱいに吸って体を膨らませ、大きくなっていく姿勢をとっています。『わぁ~ すごいねぇ〜!もう少し食べてみる?』「ウン」『どう?』「ウン、パワーアップし てきた!!」もう見事なウルトラポーズです。
こんな調子で一口ずつ口の中にごぼうを入れていくと、いろんなウルトラポーズと変身のための声が発せられました。 あっという間に、ごぼうは食べ終わりました。『このことは、K君のお兄ちゃんも知らない秘密のことだからね。内緒だよ』嬉しそうに、K君ウルトラマンは更に パワーアップして部屋を走り回り始め、止まりません。(おうちに帰っても、寝る まで動いていたそうです)これにはお母さんもビックリ。
「これまで何を言っても 食べてくれなかったのに…」と。
子ども達はいつも、心の中にキラキラした夢を抱いています。その夢の実現のた めには、心も体も総動員して大きなエネルギーを出せるのです。そして少々困難な ことも、その夢に向かっていくエネルギーにホイッと乗ると、子ども達は全身で喜びながら信じられないほどの力を発揮していくのです。
ただその時、周囲は安全を確保してあげること。また、それがその子が自ら自分の生命を成長させようとする力につながるかな?という視点で支えてあげることが必要です。
こぼうのような根菜類を食べると、根気が出ると言われています。固いものをよ く噛むことで、顎関節もよく動き、消化液もよく分泌され、免疫力が高まり、脳の血流量も増えるのですから、いいことだらけです。
見事なK君の変身ぶりに驚いて いるお母さんに、ちょっとアドバイス。『これは、子どもを目先のことで騙したの ではありません。ごぼうを食べると本当に体が丈夫になるという本当のことを、彼の夢に向かってK君にわかりやすく、スイッチを切り換えただけですよ』と。
大人になっても、いつも大きな夢や希望を持ち続けたいですね。だってそういう 人は、火の上でも火傷せずに渡れるほどの力も出て来るほどですから。その後、K 君は、「ごぼうを食べる~」と毎食、自分からごぼうをおねだりするようになり、朝から晩までパワー全開だそうです。
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