ボディートークコラム

赤ちゃんとお母さんは一心同体

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ボディートークバイオリンのレッスンが始まり「人生で初めてバイオリンを手にした」と言う人が増えてきました。何だかドキドキして、大切にソッと自分の左肩にバイオリンを乗せ、弓を持って、ソッと動かすのですが…、生まれて初めての体験きわめてぎこちない手つきです。それでも美しい音が鳴り出し、体中の細胞にその音色が伝わっていきだすと、「ワァ~!」と叫びたくなるほどの感動が湧き起こります。

その大切にしているバイオリンを、自分以外の人が「私も弾いてみたい。ちょっと弾かせて!」とヒョイと取り上げ、乱暴に弓を動かされると、もう自分の身を切られるようで「そんなに乱暴にしないで!」と、とても悲しくなってしまいます。 私は運転をしないので分からないのですが、きっと車に乗る人も自分の車を勝手に運転されて、同じような思いをされた方もいらっしゃることでしょう。

楽器や車でもそうなのですから、まして 10 ヶ月もお腹の中にいた赤ちゃんとお母さんの絆は、どれほど強く深いものなのかは、今さら言うまでもありません。

R子さんは、妊婦の時からボディートークマタニティ教室に通われ、とても楽な 自然なお産ができたと喜んでいらっしゃいました。先月、生後2ヶ月のA子ちゃんとボディートークマタニティ・子育て教室に一緒に参加されました。「よかったねぇ、 元気な赤ちゃんで。よく頑張ったねぇ」と挨拶しながらR子さんと赤ちゃんの体にさり気なく触れると、「エッ?」と驚くほど体が固いのです。出産前は自分でせっせと楽しみながら自然体運動や体ほぐしをされて、妊婦さんとしては理想的なやわらかな心と体だったR子さんです。でも一応外から見ると、母乳もよく出て、母子ともに元気そうなのですが….。

講座の中で、赤ちゃんがおっぱいを飲んでスヤスヤと眠ってしまったので、今が チャンスとR子さんの体ほぐしを始めました。背中は切なさのしこりの胸椎3.4 番、気遣いの7番、苛立ち、悔しさの8・9番、叱咤激励の10.11.12番と 見事な固めぶりです。どうも満点ママを目指している様子。出産後は実家で過ごしているのですが、産後、充分に眠った日はほとんど無いとのことです。「赤ちゃんが心配で、わずかな気配でも気になって眠れないのです」と。

こういう時は、私は お母さんを赤ちゃんのように抱くイメージで体ほぐしをしていきます。背中のしこりを手のひらで溶かすように揺すりながら「よく頑張ったねえ」「でも、ずいぶん辛かったみたいよ」「ひょっとしたら、他の人がいつも赤ちゃんを抱っこしてい て、あなたが充分抱っこできていないんじゃないかな?」 黙って頷いたR子さんの 目に涙が浮かんできました。

R子さんのお母さんは子育てのベテランなので、ぎこちないR子さんの様子を見 てじれったくて、赤ちゃんの世話に手を出しすぎていらっしゃるのかも知れません。R子さんは、思いは山ほどあるのに赤ちゃんをうまくお世話できない自分へ の怒りや、悔しさもいっぱいあるようです。「赤ちゃんも他の人に抱っこされる度に緊張していて、体が固くなっているみたいよ」「あなたの赤ちゃんなんだから、 あなたがしっかり抱いていいのよ」心や体がほぐれていったのでしょう、R子さんの目から涙が溢れ出てきました。

赤ちゃんが可愛いので、親戚や友人達が「かわいい赤ちゃんねぇ」と次 から次へ抱っこしてまわり、それをイヤと言えずガマンしながら、複雑な気持ちで 黙ってみているしかなかったそうです。特に内息気味の性格だったので、余計に自分の気持ちを誰にも言えずに悲しい思いで2ヶ月間過ごしていたのですね。

この講 座に一緒に参加していた子育てベテランの50 代のボディートーク指導者たちも 「そうねぇ。私もきっと同じような目に合わせていたような気がする…」と肩をすくめ、反省しきりでした。

たとえぎこちない新米ママでも、赤ちゃんにとって、お母さんの胸のあたたかさ、やわらかさ、おっぱいの匂い、息づかいなどは、かけがえのないものなのです。 それは、ずっと 10ヶ月一緒に慣れ親しんできた世界なんですもの。また生後1、2 ヶ月の赤ちゃんの視覚はまだ充分でなく、人の顔の形などもぼんやりとしか感じられていません。だからこそ余計に、匂い(嗅覚)や音(聴覚)、タッチの仕方(触覚)に敏感なのです。 (次号につづく)

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