手が語るこころ
●手のつなぎ方に表れる心
街を行くと、高齢のご夫婦が手をつなぎ、お互いをいたわるように寄り添い ながら歩いていらっしゃる光景に出逢うことがあります。いいなあー。気持ちもほっこりします。
人類は手を使うことによって脳を発達させ、知恵を膨らませてきました。そ して私たちの手には、いろいろな素敵な力が備わっています。
「ハイ、二人で向かい合い、両手をつないでみましょう」 「では、そのまま手を離さないで、つないだ手を見て下さい」 「手のひらを上から置いている人は、『私のことはどうにでもして!あなたにお任せ! という甘えタイプの人』」 「手のひらを下にして相手を支えている人は『あなたのことは私に任せてと!』というお世話タイプの人です」 と説明すると、一斉に会場からドッと笑い声。これはボディートークの人間関係法の代表的なプログラム「手つなぎ」です。
無意識の中で見事にホイッと出 てしまった自分の心に、思わず笑いたくなります。意識はしていないけれど、 手をつなぐと相手に心が分かる。これは初めて会った人と握手をした時、「あ、 この人は強引だな」とか、「顔は恐そうだけどやさしい人だな」とか、感じることからも言えます。無意識に相手の心が手から伝わっているのですね。
1 二人向かい合って立ちます(少し両足を開いて)
2 まっすぐに手をのばし、両手をつなぎます。
3 水上スキーをしているようなフォームで、自分の体重を自分の背中のほうへかけていきます。(互いに引っ張り合う状態になります)
4 手を離すと危険ですから、しっかりギュッとつないでおきます。
5 バランスが取れてきたら、つないだ手を少しずつゆるめていき、ユラユラと 気持ちよく揺れて楽しみます。(ハンモックにもたれたようなお昼寝気分を味わえます)
6 お昼寝気分をしばらく楽しんだ後、「サァ、いじわる手つなぎをしよう」と言いながら、「イ チ、ニイのギュッ!」とお互いにつない だ手を力いっぱいにギュッと握りしめます。 ゆるんでいた体が突然固められ、「イヤダ!」「ヤメテ!」という不快感が体中に走ります。
7 すぐに手をゆるめ、手を離します。 「アー」と言いながら体を揺すったり、胴ぶるいをしたりして不快感を取り除きます。 「もうイヤなつなぎ方はしないからね」と体に言いながら、この状態から1から5までをもう一度やってみます。
最初は安全のために手をギュッと強くつなぐことは不快ではないのに、慣れてきて手をゆるめても最小限の力でお互いを支えられる心地良さを知った後では、強い力でギュッと握りしめられることが、今度は不快感となってしまったのです。私たちの体は、危険な時、不安な時はギュッと体を固くして自分の身を守ろうとします。しかし安全で安心な時は、ホッとして心も体もゆるみ、やわらかくなっています。
一般に赤ちゃんや病気の人の体は、繊細でやわらかです。また外から見ただ けでは、その人の体の中身がやわらかいか固いかは分かりにくいものです。ですからそういう人達の手を、突然ギュッと強く握りしめたり、ギュッと抱っこしたり、背中を強くたたいたりすると、相手の人は痛みを感じたり、不快に感じることもあるのです。
ですのでボディートークでは体に触れる時、まず「ふ んわりと繊細に!」を心掛けるのは、その為なのです。