おにぎり型よりもおむすび型人生を
おにぎりとおむすびの違いを知っていますか? 当た り前のことだが、まず呼び方が違う。でも呼び方が違う ということは、中身について重大な意味があるのだ。す なわち、そのことに対するイメージが異なるのである。
おにぎりとおむすびで言えば、実は作り方のイメージが まったく別なのである。おにぎりの作り方は「握る」。おむすびの作り方は 「結ぶ」。したがっておにぎりはギュッと握るし、おむすびはキュッと結ぶ。中身はどう違うか。おにぎりは中までギュッと押さえるか ら、全体的に固い。それ に反して、おむすびは温 かいご飯を手早くキュッと外側だけ固めるから、 中身は柔らかいご飯のままである。
どちらがおいしいか。それは好みの問題であるから、 どちらとも言えないが、人間の体のあり方については、 おにぎりのイメージで生きるか、おむすびのイメージ で生きるかは大きな開きがある。結論を先に言うと、おにぎり型人生はガンバリ体 であり、おむすび型人生はスッキリ体である。そして、地球に生きる生物としての 人間のあり方は後者なのである。
おむすびの元は温かいご飯であるが、人間の体で言えば温かさとは血液の循環で あり、それ故の息の温かさである。そして心が弾むと息は温かくなるし、心が冷めると息の温度も下がってくる。
息にまつわる昔話がある。ある冬の夜、一人の旅人が雪の野原の一軒家にたどり ついた。ホッとした旅人は両手を口へ当てハァ~と一息、息を吹きかけた。家人がいぶかしげに「何をしてなさる?」と問うと、旅人は手を温めたのだと答えた。や がて食膳が運ばれる。すると旅人は汁のおワンを両手に持ち、フーと一息、やはり息を吹きかけた。家人が「何をしてなさる?」と問うと、汁が熱いので冷ましたの だ、との答え。はて同じ息で暖めたり冷ましたりとは? これは鬼に違いない。と家人は早々に旅人を追い出してしまった。
これは笑い話であるが、では何故、温かい息と冷たい息が同じ呼吸器官で可能な のか。その秘密は「ハァ~」と「フー」にある。「ハァ~」という温かい息は、気 官をリラックスさせている。そして、息はゆるやかで太い。気管の持つ体温を逃が さず、そっくり口元へ集める方法である。それに対して「フー」という冷たい息は、 気管を緊張させ、素早く、細く吐く息である。体温をできるだけ口元へ運ばないよ うにしているのだ。
人間は一息々々で生きているのであるから、どちらの息が体にいいかは自明の理 である。温かい息こそ元気の源である。日々の喜びが息を温かくさせ、温かい息が 生きる活力を産み出しているのである。反対に恨み、辛さ、苦悩の心が息を冷たくし、冷たい息が生きる意欲を削いでいくのである。
ボディートークのプログラムでは温かい息を体感することができる。
一重の円を作り、真ん中に一人が立つ。みんなは円の中央に向 かって「ワァ~ッ」と感嘆の声をあげながら駆け寄り、 中央の人を指さして一斉に「あんたは偉い!」と叫 ぶ。言葉は「いい男!」でも「おめでとう!」でも、 とにかくほめるセリフであればよい。温かい息が ドッと集中するから、ほめられた人は顔が上気して 体がポーッと温かくなる。そして大事なことは、褒めた人も自らの息によって体が温かくなることである。
内側から温かくなった体を最後に表面でキュッと引き締める。その方法は二人で 向かい合って「同時発声」を行う。一方が何の合図もなしに突然両手を開いて 「バッ!」と叫ぶ。相手は同時に両手を開い て「パッ!」と言えるかどうか。声がピタッ と合うと周りの空気が一瞬シンと静まるよう な爽快感がある。こうして体表を引き締めて おくと、体の温かさが持続し、元気が保たれ る。まさに人間の「おむすび」である。